こんなハーレムラブコメ絶対オレは認めない!
@OctoBer1993
第1章
第1話
―――オレは昔から
それは、悪の組織と戦う改造人間。
難事件を解決してしまう名探偵。
全国大会を目指して球技にうちこむスポーツマン……。
などなど、マンガにアニメ、小説、ドラマと、とにかくどんな作品でも主人公というものに特別に憧れた。
『いや、この作品は主人公よりもむしろその敵キャラの○○が憎めなくて好き!』とか『主人公より、その仲間の○○の主人公を誰よりも信頼して支える姿がカッコいいー!』などと、主人公よりも人気が出てしまうキャラがいることはもちろん知っている。
しかしそれは、オレに言わせればそれは全くもって邪道な考えである!
主人公よりもそのキャラが好きだと思ってしまうその気持ち自体は仕方ない。
仕方ない、が……しかし!!
しょせん彼らは主人公という存在ありきのキャラクターなのだ…!
彼らの魅力は、結局、主人公との関係性において―ライバルや仲間などの―あくまで【主人公じゃないポジション】であればこその魅力なのだ。
結局は【主人公】と比べてこのキャラクターは…と考えてから始まる魅力なのである!!
……ながながと熱く語ってしまったが、、。
きりがないので今回はこれぐらいで止めておくが、つまりのところオレはなにが言いたいかというと――。
どのような作品においても【主人公】がやはり一番価値のある存在であり、一番大事ということだ…!!
そして【主人公である】ということと【主人公で無い】ということには越えらない高~い高~い壁があるということだ。
……さて、そのことをふまえたうえで、やっとこの物語を始めさせていただこう。
はじめに言っておくがこの物語は
【ハーレム系ラブコメディ】である。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
……どんづまりである。
この2年A組の教室の窓の外いっぱいに広がる6月の気持ちのいい晴れやかな清々しい青空を見ながら、そんな青空とは対照的に暗いこと考えているのがオレ、
オレがこの青空に負けないぐらいのブルーな気分であることには原因があるのだ…。
それは――。
「よっ、ツカサ」
とオレの1人語りをたった今さえぎったこの男こそ、その原因である。
オレの友達、
タイヨウは挨拶がてらにオレの肩をばしっと叩くと、オレの前の席に位置する、自分の席にガタっと座って、またオレに話しかけてくる。
「ったく今朝は最悪だったぜ、もう少しで遅刻になるとこだったわ。ギリギリセーフ」
そう言われ彼を再度注目して観察してみると、たしかにタイヨウの額からは汗がしたたり落ちている。
遅刻をまぬがれるために走ってきたのだろう。
「ったく、朝から騒がしいやつだなお前は」
苦情をこめて憎まれ口を言ってやった。
しかしそんな憎まれ口など本人には全く伝わっていないらしく、けろっとした表情で話を続けてきた。
「そういうツカサは、なんか朝から
いやお前のせいなんだが…。
この鈍感男には、このオレの憂鬱が自分のせいであるという自覚が全く無いのだからタチが悪い。
「だれのせいだと思ってやがる、だれの…」
と今度はタイヨウにでは無く、自分に言い聞かせるようにボソッとつぶやいた。
「え、なんか言った?」
そんなオレのつぶやきに、すっとぼけた表情で反応してくるタイヨウ。
「……なぁタイヨウ、お前さぁ。その『なんか言った?』って質問してさ、『なんて言った』か教えてもらったことある?」
「え?…そう言われてみれば、何て言ったか教えもらったこと無いかもしれないかもな?」
……出たよ、これだよ。
今のオレたちのやり取りだけでも察しの良い人間は気づいたかもしれないが。
このオレ千尋司がブルーな原因とは、このオレの友達である夏目太陽の持つ、とある才能にある。
それはつまり――。
ガラガラガラッ。
「よーし、お前ら席につけー」
勢いよく開けられたドアから登場した担任の教師によってオレの1人語りはまたもさえぎられてしまった…。
そして担任の登場によりオレとタイヨウの話 は否応なしに打ち切られ、クラスメイトたちも各々自分の席に着席し始めホームルームがはじまった。
…え、なんなの?オレってさえぎられ上手なの?
人に話を後まで聞いてもらえない才能があるのかしら?
非常に嫌なんですけどぉぉ…。
とにかく、先ほどからさえぎられてばかりの話に戻ろう。
そのオレの友達こと、オレにとってはライバルであり倒すべき相手である、
「ということで転校生を紹介する」
オレの1人語りは、オレをよそに着々と進行されていたホームルームでの担任の『転校生』というパワーワードによって急にピタッと止まってしまった。
……え、転校生!?
その転校生というパワーワードに反応したのはもちろんオレだけでない。
クラス中が一気にザワザワしだしやがった。
しかも、その転校生は女子である、ということが担任の口から告げられると、いっそう騒々しさは増し、特に男子生徒たちは色めきだしている。
たしかに【転校生の女の子】というのは健全な男子高校生ならば、普通だれしも心ひかれる夢のあるワードである。
そして、その【転校生の女の子】というワードの頭には勝手に【美少女の】という言葉がくっつけられる。
そして、これまた勝手に自分との恋の予感を感じちゃったりするものなのだ。
……いや、アホすぎるだろ。男子高校生。
だがしかし。
それは、普通は…ならばである。
そんな普通の反応をとれないのがオレ、
オレはその転校生というパワーワードにクラスメートと同じように歓喜したわけではないのだ。
むしろ逆に背筋が凍り、嫌な汗を全身かいてきて、そして転校生は女子であるという話に、疑惑は確信へと変わった。
……やっちまった!!
ちくしょう最悪だ。
そんなパターンもあるのか…!?
転校生だと…?
こんなことが現実に起こってしまっていいのか……?
ダメだ!やめてくれ!!
しかしそんなオレの願いが届くわけもなく。
「よし、じゃあ入ってこい」
という担任からのゴーサインが廊下にいる転校生へ出てしまった。
転校生の出現により、ここから始まる、明るい学生生活への期待と希望でドキドキざわざわしているのんきなクラスメートたち。
そんなクラスメートたちとは裏腹にいまだに現実を受け入れられずにいるオレ。
そんな皆の前に渦中の人物である転校生の女子生徒はついにドアをガラガラっと開け教室の中へとはいってきた。
なんとそこには、クラスの連中、おもに男子たちが勝手に上げたハードルをさえも軽々と飛び越えてしまった美少女が立っていた。
小さな顔に大きな瞳、長いまつ毛、腰のあたりまである
そのどれも全てが彼女が美少女であるということを物語っている。
その転校生の正真正銘の美少女っぷりにクラスメートのさっきまでのお祭り騒ぎのような騒々しさは、逆に失われていた。
だれかがつぶやくように言った。
「いやマジじゃん…」
なるほど…。
「人間は自分の想像できうる範囲のものごとしか理解できない」とはまさにこのことだ。
自分たちで転校生を勝手に美少女と決めつけて妄想をふくらましていたが。
現実のその美少女転校生(仮)が妄想よりもあまりにも上のレベルのマジもんの美少女だったことに驚き、どう反応すればいいのかわからなくなってしまっているのだろう。
「……いや、マジでチョー可愛くない?」
「…やべーな、あれはちょっとレベルが違いすぎる」
転校生の美少女さに圧倒されたのだろう、騒ぐどころか女子も男子も近くの人間に、こそこそっと内緒話のようなボリュームで話す程度にトーンダウンしてしまった。
フッ…。
クラスメートたちには悪いがこの物語においてはやはり彼ら彼女らはしょせんモブキャラなのだ。
【美少女転校生の登場】というテンプレな出来事に、これまたテンプレな反応をしめしていやがる。
いや、しかしありがとう。
このハーレムラブコメを盛り上げてくれるのはキミたちのようなモブキャラがいてくれてこそなのである。
しかしそんな彼ら彼女らとは違い、オレは知っているのだ。
……いや、それはこの転校生の美少女を知っているのでは無く、この後、この静寂はある人物によって壊されることを――。
「あー!!お前は今朝の!!」
オレの1人語りは、オレの前の席に座るその男。
………そう。
このハーレムラブコメの主人公は――。
なんかわからんけどオレじゃないっぽい…。
……なんでこうなった??
…し、しかし認めんぞ!
こんなハーレムラブコメなんて…!
こんなハーレムラブコメ絶対にオレは認めない!!!
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