10.春と冬


冬、ひゅう、と

家の裏手を通ったかと思えばわずか後ろに引っぱられたりしながらぞろぞろ行進している

行進からそれたらそれたで悪びれもしないで

小さな窓にも訪れて 手を振ってゆくものらしい


──目を離した隙に

窓縁の一辺 冬の手形がついていた

誰が仕掛けたんだろう

雪というやつは手品みたいだ

平面の空から際限なく落ちてくるネジみたいだ


死の世界から吐き出された夢の逆再生なのか

月見草の残骸が肩を組みながら着地して

ひとときの舞踏、 アスファルトをぽつんと黒く引っ掻いただけで

あぁここに夢の根付く場所なんかない


──たとえば君は、柔らかな呼吸を封じ込めた季節、 うまれた

強くあたたかな空に溢れた風に

大手を振られてふかふかと笑って消えた

今もどこかで、そうであるといい


夜が枯れ木をさぁあ……と震わして

砕けた針音が巡り会う

ガラス瓶の中の森で

新しい迷路で

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