10.春と冬
冬、ひゅう、と
家の裏手を通ったかと思えばわずか後ろに引っぱられたりしながらぞろぞろ行進している
行進からそれたらそれたで悪びれもしないで
小さな窓にも訪れて 手を振ってゆくものらしい
──目を離した隙に
窓縁の一辺 冬の手形がついていた
誰が仕掛けたんだろう
雪というやつは手品みたいだ
平面の空から際限なく落ちてくるネジみたいだ
死の世界から吐き出された夢の逆再生なのか
月見草の残骸が肩を組みながら着地して
ひとときの舞踏、 アスファルトをぽつんと黒く引っ掻いただけで
あぁここに夢の根付く場所なんかない
──たとえば君は、柔らかな呼吸を封じ込めた季節、 うまれた
強くあたたかな空に溢れた風に
大手を振られてふかふかと笑って消えた
今もどこかで、そうであるといい
夜が枯れ木をさぁあ……と震わして
砕けた針音が巡り会う
ガラス瓶の中の森で
新しい迷路で
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます