第6話『ランダム永続召喚』


「ランダム永続召喚っ!!」


『イメージクリア。召喚対象は五体――ランダムに選定します。

 ランダム永続召喚を実行――――――』


 俺は召喚先を選べないランダム永続召喚を行う。

 永続召喚に比べ、ランダム永続召喚の方が消費MPは少なく済むからだ。

 更に、俺のステータスは永続召喚を果たすごとにその分だけ上昇する。

 つまり、俺は永続召喚をすればするほど強くなれるっ!



「なっ!? あなた馬鹿ですか!? ラスボスをランダムで……それも永続召喚!? ラスボスが自分に危害を及ぼすとか考えないんですの!?」


 こっちの無謀を非難してくるペルシー。

 いやはや全くその通り。正論過ぎて耳が痛い。女王様は真っ当な危機管理能力をお持ちのようだ。いや、そうじゃなきゃ女王なんてやってられないか。



 実際、女王であるペルシーの言う通りランダム召喚は召喚先が選べないからリスクは高い。世界を滅ぼしかけてたりするラスボスを召喚するのならなおさらだ。

 しかも、それを永続的に召喚するとなるといつ寝首を掻かれても不思議じゃない。 


 だが、今回に限ってはランダム永続召喚だろうが普通の永続召喚だろうがリスクは対して変わらない。


 なにせ――


「もう『外れ』しか残ってないからな」


 言ってて少し悲しくなるが、それこそが俺がランダム永続召喚を選択した最大の理由だ。


 残ったラスボス枠に居るのは五人。

 圧倒的正義狂いの攻撃力に全振りの狂人――斬人。

 強くなる事にしか興味のない我がまま野郎――ココウ。

 最強のラスボスにして人を見下す事が大好きなクズ――サーカシー。

 悲劇を見る為に暗躍しまくる何をしでかすか一切読めないサイコパス野郎――シュランゲ・ボルスタイン。

 どこで出しても被害甚大間違いなしの巨大ロボットの操り手――クルベック。



 クルベックだけこの中で若干まともかもしれないが、正直誤差の範囲内である。

 どれが出てきてもリスクは大して変わらない。

 


「それより、そっちは本当に普通の通常召喚でいいのか? こっちは今出ているルゼルス達も含めみーんな永続召喚で呼び出してるラスボスだぞ。一人は諸事情で呼べないけどな」


 もちろん、諸事情で呼べないのはアレイス王国で国王になってるらしいウルウェイ・オルゼレヴ君。お前の事だよ。


「何を馬鹿な事を……この場で24時間以上戦う訳でもなし。通常召喚も永続召喚も変わりませんわ。――――――ランダム通常召喚っ!!」


 最初の召喚の工程が一区切りついたのか、次の召喚を行うペルシー。

 召喚されかけているあいつは……ジェストか。

 ウルウェイ・オルゼレヴを破った脅威の主人公だ。


 しかし、また俺が召喚するラスボスに対応した主人公とはな……。

 まだ確定ではないが、もしかしたら俺が召喚できるラスボスと向こうが召喚できる主人公はリンクしているのかもしれない。


 それにしても……あくまで永続召喚はしないつもりなのね。

 この流れでコウを永続召喚してくれればラッキーと思っていたのだが……そう上手くはいかないらしい。

 


『ランダム永続召喚を実行――――――成功。

 MPを10000消費し、悪の断罪人、斬人きりひとを永続召喚します』



 こちらのランダム永続召喚も一区切りつき、虚空に斬人の姿が現れ始める。

 しかし……斬人か。

 外れではあるが……まぁサーカシーを引き当てなかっただけまだマシと言えるか。



「……ランダム永続召喚」




 ペルシーの主人公召喚が続く以上、こっちもここで止まるわけにはいかない。

 というわけで、最初のランダム永続召喚を完全に終える前に次の召喚を始める。


『イメージクリア。召喚対象は四体――ランダムに選定します。

 ランダム永続召喚を実行――――――』


 ここで俺がランダム永続召喚を選択した理由は他にもいくつかある。

 まず、単純な問題としてペルシーが召喚する主人公が俺の召喚するラスボスに匹敵する者であるならば、最低でも敵と同数程度のラスボスを召喚しなければならないという理由。

 だが、全てのラスボスを普通に永続召喚するだけのMPは今の俺にはない。だからこそMPが節約できるランダム永続召喚だ。


 他には、召喚できるラスボスのどれを引いてもリスクがある俺の現状ならば、もうリスク覚悟の上で真っ先にラスボスの彼らが牙を剥けるであろう主人公様が居るこの場で全員纏まとめて永続召喚してしまった方が良いんじゃね……と考えたから等である。

 そうすれば俺の背負うリスクは激減するしな。


『ランダム永続召喚を実行――――――成功。

 MPを10000消費し、悲劇の演出者、シュランゲ・ボルスタインを永続召喚します』


 考え事をしている間に次のランダム永続召喚も一区切りつく。

 召喚されるのはボルスタインか。

 運よくサーカシーを引き当てずに済んだようだ。


 あいつの召喚は最後が理想だからな。このまま引き当て続けない事を祈ろう。



 そうして俺とペルシーが召喚を繰り返してる中――


「最初っから全開でいっくよー♪ みんなみんなみーーーんなアリスの中で遊びましょう? ――――――アリス・イン・ワンダーランド」


「……ちっ、最初からそれか。ヴァレル、女王は俺が守る。お前は最初にあの宝石鬼をなんとかしろ。守るべき女王というハンデがある以上、あれは厄介だ」


「久々に口を開いてくれて嬉しいけどなぁ遊馬ァッ。そいつはちょいと無茶ってもんだぜ! 向こうは三人に対し、こっちは二人。時間を稼ぐので精一杯だっつの。そもそも、アリスが厄介なのは知ってるがこっちの魔女様に時間を与えすぎる訳にもいかねぇだろがっとぉぉっ!!」


「くすくすくす。初対面なのにお互い手の内を知っているというのは少し不思議な気分ね。そこまで付かず離れずの距離を取られるとまともに詠唱も出来ないわ」


「その言う割にはお二人とも……この状況を楽しんでいませんか?」


 とてつもなく激しい戦闘を繰り広げているラスボスと主人公の姿があった。


 俺達の周囲は既にアリスの能力によって一変しており、ここに居る全員がアリスの体内へと入場してしまっている。


 アリスの体内――それは敵味方問わずアリスの攻撃が必中となる空間だ。

 防ぐことは可能だが、避ける事はよほど特異な能力でもないと不可能な空間。


 当然、その猛威は召喚している最中の俺やペルシーにも牙を剥く。


 俺はリリィさんやセンカに守られ、あちらのペルシーは優馬によって守護されている。

 ちなみに、現在戦闘能力が無いに等しいルールルも絶賛リリィさんやセンカが守ってくれているので安心だ。


 そんな猛威の中でも、俺とペルシーは召喚を続ける。

 展開されたアリスの体内に次々と現れる主人公とラスボス達。

 そして――


「ランダム永続召喚っ!!」


『イメージクリア。召喚対象は一体――ランダムに選定します。

『ランダム永続召喚を実行――――――成功。

 MPを10000消費し、悪逆皇帝サーカシーを永続召喚します』

 


 日頃の行いが良かったのか。運よく最後までサーカシーを引き当てずにすんだ。

 よし、これでようやく……全部のラスボスを召喚出来たぁぁぁぁぁぁっ!!


「いよしっ!!」


 思わずガッツポーズをしてしまう。


 ――とはいえ、これで問題ないかと言えばそんな事はまるでない。

 サーカシーの召喚は勿論の事、他のラスボスの召喚もかなり危険な行為だ。

 更に、それ以上に危険なのが相手の主人公達。

 ざっと向こうの召喚された主人公達も見てみるが、やはりそのどれもが俺が召喚するラスボスに対応したものだった。



 アレは冗談抜きでヤバイ。


 いくら召喚士のペルシーがクズだからと言って、喧嘩を買ったのはやっぱり間違いだったか? とほんのちょっぴり冷静になれた俺は少し後悔。


「クククククククククク。アハハハハハハハハハハハハハハッ。ハハッ。ハハハハハハハハハハッ――」


 そんな俺の心情を知っているのかいないのか、先ほど呼び出したラスボスの一柱であるシュランゲ・ボルスタインが狂ったように笑う。


「なんという喜劇。全てのラスボスと主人公が集いしこの舞台。嗚呼ああ、あぁ、あぁぁぁぁぁ。胸が躍る。私の創作意欲が掻き立てられる。

 ――あるじよ。永続召喚して頂けたことを深く……深く感謝しよう」


 そう言って頭を下げ、感謝の意を示すボルスタイン。

 ただ、ここまでされても何か狙ってるんじゃないかと思ってしまうなぁ……。

 警戒するべく四肢に力を籠め……たいのは山々なのだが、今はそれも出来ない。

 なにせ――



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 完全に文字化けしたソレが浮かぶと同時に、俺は体を指一本動かせないようになってしまったからだ。

 なんか頭の奥の方がチリチリと痛むような感覚があるが……やばい。これどうしよう?

 眼前のボルスタインや主人公含め、危険人物ばかり。

 これは……もしかして詰んだ?



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