第16話『道案内』
「健一。あのメイドNPC。道案内とかは出来るのか?」
「あぁ? そりゃまたどうして?」
「質問にだけ答えろ。出来るか? 出来ないのか?」
「うっは怖えぇ。まぁ、端的に言うと出来ねえな。あれは命令された事しかできない人形みたいなもんだ。更に言えば新しく何かを覚える事もできねぇ。まさに『ヴェンデッド・フェスタ』から飛び出してきた状態って感じだな。出来る事は限られてる」
「そうか、そりゃ残念」
エセ魔王達による大攻勢。健一はこの事態をそう捉えた。
きっとその読みは当たっているのだろう。なら、ここだけでなく他の亜人の集落も被害に遭っているはずだ。
どうせエセ魔王を一匹残らず潰すのなら、完封したい。
だが生憎、俺はこのエルフの集落とライカンスロープの村にしか行ったことがない。
だからこそ道案内を願ったのだが……無理なら仕方ないか。多少の犠牲は覚悟するしかない。
そう腹を括った俺だが、健一は『まぁ聞け』と俺を呼び止める。
「確かにメイドNPCに道案内なんてのは不可能だがな。俺やここに居るルナなら好きに使ってくれていいぜ。なにせ、今の俺たちは助けられる側だからな。せいぜい駒としてうまく使ってくれや。カカッ――」
「ククク。我を駒として扱うか。良かろう! 貴様が我の力をどこまで引き出せるか……見せてもらうぞ、闇の同胞よ」
俺の指示通りに動くと明言する健一とルナ。
だが――それではダメだ。
「元からそのつもりだが……ダメだな。まず、健一にはここに残ってもらいたい。俺に足りない数の力を持ってるお前は俺の傍に居るべきだ。いつでも動かすことが出来る状態で居たいしな」
「ほーう。なるへそ。それじゃあ道案内はルナに任せればいいんじゃねぇか?」
「ククク。我が道案内とやらをすればよいのだな……良かろう。冥府への道案内でもなんでもやってやろうぞ」
「……お前らがいいならそれでもいいけどな。一応聞いておくが、ルナって強いのか?」
俺と同族の厨二の少女で健一が創り出したNPC。
だが、戦ったところを今まで見たことはないし、強いかどうかも不明だ。
「クックック。我を誰と心得る。この右腕に封印されし邪龍が目覚めし時、この世界は――」
「あ、戦力としては期待すんな。生存能力だけなら最強クラスだし魔女様の攻撃にも耐えられるだろうが、攻撃面はからっきしだ。普通の女子となんら変わりねえよ」
「ぎゅにゅぅぅぅぅぅぅぅぅ。健一がそう設定したんでしょこのバカ!!!」
またコントじみたやり取りを始める二人。
ともあれ、ルゼルスを知っている健一がそのルゼルスの攻撃にすら耐えられる程にルナは頑丈らしい。
なら、問題ないか。
「じゃあ、道案内は任せた」
半ば投げやりにルナへと道案内を任せる。
「え? うん、分かった……じゃなくてっ――ククク、望むところよ。さぁ、闇の眷属よ。汝はどこへ征く? そして我に何を魅せてくれるのか――」
「いや、もうちょい待て。今から呼ぶから」
「クックック。そうか、深淵からの使者を現世に……え? 呼ぶ? 呼ぶって誰を?」
目をパチクリさせるルナの問いに答えず、俺は準備を整える。
そして――
「通常召喚。対象は――クルベック・ザ・グロステリア」
『イメージクリア。召喚対象――クルベック・ザ・グロステリア。
通常召喚を実行――――――成功。
MPを1000消費し、秩序の支配者、クルベック・ザ・グロステリアを24時間召喚します』
俺は巨大ロボたるエクス・マキナを操るラスボス――クルベックを召喚した。
敵はアホみたいにうじゃうじゃ居るであろう魔物とエセ魔王だ。
しかも亜人たちは健一の指示で地下シェルターに引きこもっていると言う。ならば今こそクルベックが活躍すべき時だろう。
そうして紫色の
俺が望む事はクルベックも把握している。
そしてそれは――クルベック自身も望む事だ。
「いつの世も戦いか……世界を隔ててなおこれとはな。いや、敵がハッキリしている分いくらかこちらの方がマシか。余の世界もこれほど単純な物であればどれだけ良かったか――」
眼前の争いを目にして感傷に浸るクルベック。
しかし、それでも静かに小型のデバイスを持って右手を掲げる。
そうしてそれを天に掲げ――
「起動しろ――アルヴェル!!」
クルベックの意志に呼応し、掲げられたデバイスはその形を変えてゆく。
それはクルベック自身をも飲み込み、巨大なものへとその姿を変えてゆく。
エクス・マキナ――『アルヴェル』。
全高55メートル強の鋼鉄の巨人が姿を現す。
「「「でゅええええええええええええええええええええ!?」」」
「「「デュエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!?」」」
それを見たルナと敵のエセ魔王&魔物たちが驚きの悲鳴を上げている。
エセ魔王と魔物たちはその巨大な鉄槌が今にも自身達に振り下ろされるのではないかとビクビク震えていたが――
『さぁ、余を次なる戦場へと導け、娘』
「へ? ちょっまっ……きゃわぁっ!?」
道案内役のルナを連れ、クルベックの機体『アルヴェル』が飛翔する。
「ぎゅにゃわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
高速でどこかに飛び去って行く『アルヴェル』。
そうして場にはルナの悲鳴だけが残され、クルベックとルナは旅立った――
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