第二章 青年期 教会崩壊編
第1話『ダンジョン攻略開始』
――三年後。とあるダンジョン。
「――ここか」
俺、ルゼルス、センカの三人は地下へと続くダンジョンの入り口前に立つ。
今回、俺たちは王様からの依頼でこのダンジョンの攻略に来た。
「くすくすくす。やはりダンジョンというのは基本的に地下に続く物なのね。ダンジョンの主によって色々と趣向が異なっているから面白いわ」
地下へと続くダンジョンを見てくすりと笑いを漏らすルゼルス。
ルゼルス・オルフィカーナ。
彼女はゲーム『レッドアイズ・ヴァンパイア』に登場するラスボスで、俺が永続的に召喚した存在だ。
腰まで伸びた血よりも濃い赤の長髪。
見る者を恐怖させる金と銀の
恐ろしいほどに美しい
その幼い容姿にピッタリの黒を基調としたゴスロリ服に身を包んでいる。
――全てゲームで登場した時と同じ状態。そのままだ。
まぁ、それも当然だろう。彼女の体の成長は『止まっている』。
不老不死である彼女は老いる事なく、この先何千年経とうがその美しさを保ったままなのだ。
「魔物を使ってダンジョンを建築する場合、地下に伸ばした方が楽そうですからね。もしかしたら、そういうセオリーみたいなものがダンジョンの主の間にはあるのかもしれませんよ?」
自分なりにダンジョンが地下に続いている理由を考察するセンカ。
センカ。
人間と魔人の間に生まれたハーフの女の子だ。今年でもう16歳になる。
この世界において、魔人は人間から疎まれる存在であり、ハーフであるセンカも不当な扱いを受けていた。
そんなセンカを俺が拾ったのが三年前。
なんと、彼女は厨二なら誰もが憧れるであろう影を操る技能『操影』の持ち主だったのだ。
若干厨二の
サラサラと流れる銀の長髪。よく手入れされており、輝いて見える。
それとは対照的に、無垢な人形のように可愛らしく整った顔立ち。三年前とあまり変わらない。
その澄んだ翡翠の瞳も三年前と変わらずとてもキレイだ。
背も少し伸びた。まぁ、俺の背も前に比べて伸びたから身長差は開くばかりだけど。
俺が昔与えた物と同じデザインである赤と白を基調としたブレザーに身を包むセンカ。
ただ、これは先日センカが自分で購入したものだ。俺が三年前に与えたものはとうにサイズが合わなくなってお蔵入りとなった。
「まぁ、拠点を守りやすいって意味でもダンジョンは地下に伸ばす方が君臨してる
最後にこの俺、ラース。
もともとは剣聖の家に生まれた長男だったが、色々あって追放され、今はフリーの冒険者みたいな事をやっている。
元々は召喚ができない召喚師という雑魚でしかない俺だったが、ある日前世の記憶が蘇るとともに異色の強力技能『ラスボス召喚術』に目覚め、今は召喚したラスボスであるルゼルス・オルフィカーナと厨二なら誰もが憧れる影操作技能『操影』を持つセンカと行動を共にしている。
ちなみに俺の前世はラスボス好きのちょっと厨二が入ったどこにでもいるサラリーマンだったと思う。仕事で得た金のほぼ全てを趣味であるゲーム等に費やしていたのだけは覚えている。正直、きちんと覚えているわけではない。前世の記憶が蘇ったとは言ったが、それは部分的なものでしかない。要は、前世で印象的なあれこれを思い出しただけなのだ。
「わざわざ最下層まで行かなくてもいいのだけどね。ここから下に向けて超級の魔術を叩き込めばダンジョンごとコアを破壊できるわ」
掌の上で複雑そうな魔術を構築するルゼルス。
彼女の言うことは事実その通りなのだろう。実際、そうやってダンジョンをコアごと破壊した事がある。
ただ――
「いや、今回は普通に攻略しないといけないだろ? この後の計画の事もある。そもそもルゼルスから言い出したことだぞ?」
「くすくすくす。分かっているわ。ちょっとした冗談よ」
そう言って構築していた魔術を破棄するルゼルス。
現在、俺たちは教会を潰すために暗躍中だ。
教会はセンカのような魔人の血が入ったものを差別する。
俺たちはそれが気に食わない。だからそれを潰す。簡単な図式だ。
無論、教会を潰す理由は他にも幾つかあるが……それを説明するのは面倒なのでここでは割愛する(詳しくは一章終盤)。
もっとも、ただ力で教会を潰すわけじゃない。信仰というものは暴力でどうにかできるものじゃないしな。
だから俺たちは少し手間のかかる方法で教会の力を削ぐ事にした。
三年前からそれを主目的として動いている。
今回のダンジョン攻略もその一貫だ。
だが、ルゼルスが今やろうとしたような強引な攻略はダメだ。この後の計画に差し障る。
――というわけで。
「さて、それじゃあ行くか」
「ええ」
「はいっ!」
俺たちはダンジョン内へと潜った。
★ ★ ★
投稿再開!
今日は夜にもう一話投稿する予定です。
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