茜色廃園

理柚

茜色廃園

摘芯を待つ植物のために

丁寧に爪を研ぐ必要がある

萌芽の情動を煽る遊戯に

したり顔で興じていると

それは 突然現れる


茨を踏み分け

門を押し開く

さんざめく光の嘲笑に

たじろいてはならない

侵入者ならば

最奥を目指すのみ


侵入者は 思慮深く構え

聡明に見える

それを歓ぶのは束の間

口を開けば浅はかな暴君となる

狭霧

枝と枝を編み込む

蜘蛛の糸が露に撓る


永く居て遠くにも在ると

侵入者は言う

それは空言であると

この廃園は言う


最奥への標は朽ち

侵入者はいつしか消え去る

踏み折られた茨は

宙を刺しながら身をもたげ

門は閉じられる 



丁寧に爪を研ぐ必要がある

摘心を待つ者のために

詠唱

明彩を失くしても

日没にはほど遠い

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る