第442話 『悪魔』の能力
「ふむ、らちが明かないのである」
ホログラムから何度も木や肉が裂ける音が聞こえる中、オーギュストの口が動くとその呟きが聞こえてきた。
「なら、さっさと、諦めてほしいのだが?」
「そうもいかないのである、こちらにも目的があるがゆえに…………仕方ない、残しておきたかったのであるが」
そう言うとオーギュストは後ろで組んでいる腕を外すと、軽く手首を触り調子を確かめると
「っ!?」
ドドッ
『な、なんと!この試合始めて有効打が入った!!ゼディ選手の生み出した木の根が触手をかいくぐり、オーギュスト選手の腹部と肩に突き刺さる!!』
リティシィの言葉通り、ゼディの生み出した木の根の二本が触手の防御を搔い潜り、オーギュストの左腹部と右肩に刺さる。
「肉を斬らせて骨を断つだったであるか?まぁ、ダメージもほぼないのであるが」
オーギュストは怪我に意味はないとばかりに軽口を叩くと同時に、自身の体を貫いている木の根に触れる。
「『
「っ」
オーギュストの手に黒い靄が掛かると同時に、木の根は触れている部分からまるで枯れ木の様に変化していった。
『オーギュスト選手!ゼディ選手の木の根をどんどん枯らしていく!!』
ゼディの生み出した木の根はまるで枯れていること自体が攻撃だと証明する様に、ゼディ自身に向かって次々と変色していく。
「っっ」
だがゼディもそれをただ見ているわけにはいかず、すぐさま木の根を分離して、大きくその場から後ろに飛ぶ。
「……まさかこれだけか?」
「そんなわけないのである、―――」
ゼディの問いかけにオーギュストは一言だけ返すと、その後はこちらにも聞こえないほど小さく何かをつぶやく。
すると―――
『うへぇ!?なんですか、アレは!?』
リティシィの実況に異を唱える者はいなかった。その理由だが
「ふむ、どう名づけるのが言いであるか……そうであるな『
オーギュストが触れていた木の根が一か所にねじり纏まると、その姿を変える。木の根の表面には人の顔の様なものが浮かび上がり、それらは苦悶の表情をし、口と思われる部分を動かしていた。また木の根の先は手の様になっており、表面に生まれた顔らしき部分を何度も引っ掻いていた。そして木の根が集まった頂点部分には木の根が幾重にも重なり逆さになった人の顔が存在しており、そこから、人が嫌がる様な音が何ども発せられていた。
「……気持ち悪いな」
コロッセオ内の観客はゼディの言葉に頷く。
なにせオーギュストが生み出したものは、生物としてあまりにもかけ離れていて見たくもないクリーチャーと言える代物だった。
「さて、では、
「オ゛ォ゛ォ゛オオオ゛オ゛」
オーギュストの言葉で『
始めるのだが――
『うひぃ!?気持ち悪い』
『
「……」
ゼディはその『
「『緑樹の芽吹き』」
その言葉と共にゼディの周囲から木の根が次々に芽吹き、『
それも圧倒的な物量に寄り、『
「オ゛ォ゛ォ゛オオオ゛オ゛」
「っっ、お前もか!!」
大量の木の根が『
「っっ、だが、それ以上に生み出せば!!」
「いや、それはお前と同様周囲を飲み込んでいくのである」
「っ!?」
ゼディは先ほどの様に木の根を分断して、すぐさま届く前に切り離す。
『おお!なんと!あまりにも醜悪な怪物はゼディ選手の生み出した木の根を片っ端から飲み込み巨大化していく!そして、これは完全に主体的な感想になるのですが、是非ゼディ選手には勝ってもらいたいですね!!』
実況は行うが、最後に主観的な感想が入り、思わず笑ってしまう。
だが、その笑いもすぐに収まる。その理由だが、オーギュストの能力の凶悪さにあった。
(あんな化け物を簡単に作れるとはな……テロのやり放題だな)
自身の言うことを何でも聞く悪魔を作り出す能力、詳細はわからないが、貴族からしたら悪魔の様なの力だった。
「っっ」
「諦めるのである。ワガハイとお前の能力では比べ物にならないほどの差がある」
「オ゛ォ゛ォ゛オオオ゛オ゛」
オーギュストの言葉に同意する様に、生み出された木の根を飲み込み二回りほど大きくなった『
「確かに、僕とお前の相性は異様なほど悪いようだが、それでもやりようはある」
ゼディはそういうと、周囲に木の根ではなく、太い蔓の様な物を生み出した。
「『開花する爆種』」
ゼディが何かを作動させると、蔓は葉を生み出し、その後砲身の様な花を生み出す。
「ふむ、そういう事であるか」
「オ゛ォ゛ォ゛オオオ゛オ゛」
オーギュストはゼディの動きに何かしらの予想を建てるが、それを無視して『
「知能はない訳か、なら好都合だ。爆ぜろ」
ググッ、ボン!!
ゼディの言葉で花はがくの様な場所が膨らみ、何やら破裂音が聞こえてくる。
「ふむ、一回戦と似ているな」
オーギュストは『
ボン!!
そして種が『
「なるほど、枯らして吸収されるよりも先に爆発で削り取ってしまえば、確かに問題ないであるな」
「そうだ」
二人が会話している間も現状は続く。
「オ゛ォ゛ォ゛オオオ゛オ゛」
ボボボン!!
『
『あらあら、状態が膠着してしまいました、さて、この次の展開はどうなることやら』
「残念ながら、次はないのである」
リティシィの実況にオーギュストが答える。
『え?』
「……何を言って」
ザシュン!!
リティシィとゼディがオーギュストの言葉に困惑していると、肉に何かが刺さる音が聞こえる。
「っっ、な゛んで」
ゼディは後ろを振り向き、自身の背に刺さるに刺さる
「何、簡単である。出てくるのである『
ジャジャジャ
オーギュストの声で砂をかき分ける音が聞こえる。そして現れたのはせいぜいが7,8メートルしかない木の根だった。
「何も土の中を這い巡らせるのは貴殿専売特許ではないのである」
「っっ、だが僕はしっかりと近づいてくる攻撃には」
「そうであるな、ワガハイの攻撃であれば貴殿は気付いて、攻撃を防いでいただろう。だから少々、策を講じさせてもらった」
オーギュストはそういうと地面に散らばっている木の根の掴むと、木の根はまるで蛇のように動き始める。
「貴殿の攻撃に貴殿の防御が反応してどうするのである?」
「なるほど…………僕の根を使ってあれを作れるなら、ほかも警戒しなくちゃいけなか―――」
ゼディは自身の敗因を悟ると同時に光の粒子になり、勝敗が付いたのだった。
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