冷徹公爵の異世界人生~助けてほしいだと?なら見返りは?~

朝沖 拓内

第一章こうして転生し盤石な人生を手に入れる

第1話 転生

 人という字は共に支えあっていると聞いたことがある。


 だがそれは本当だろうか?


 支えるために必要な対価を払えず、見捨てられる人もいるのではないだろうか。













 俺は信頼することをやめる。


「そうなの?」


 ああ、俺の死に親友だと思っていた奴が関わっていたと聞いて失望しない奴がいるか?


「まぁどうでもいいけど……君は死んだ、交通事故でね。詳細を聞きたいかい?」


 いや、いい。どうせ親友が俺を殺すために手配したんだろ?


「なんだ分かっていたのか」


 当然、あの技術をうまく使えば巨万の富を得ることができるからな。


「なんか冷めているね、ここは『なっなんだってー』とかの反応が来てもよかったのに」


 それは失礼したな十分に予測できていたことだ。


「……ちょっと君に興味がわいてきたね」


 そうか?


「少し君の人生を見させてもらうよ」


















 俺はとある大企業の跡取り息子として生を得た。家族は俺、両親に弟と妹二人、あとは両方の祖父母だ。そんな家庭で暮らせて俺は…………不幸だった。


 理由は俺の容姿に関係する。端的に言って俺は不細工だから。これだけでと思う人もいるだろうが十分な理由になってしまった。


 両親は美男美女で俺のような不細工な子供ができることなどないと考えられていた。そのため父は母の浮気と疑い、離婚騒動にまで発展した。その後は当然ながら家の中で居場所を失う。父は忌々しいものを見るような目で、母は俺を恨んだような目で俺を睨む。さらには弟と妹の容姿が良かったことから余計に毛嫌いされた。


 学校では少ない友達と楽しく過ごしていたのだが、弟が入学すると根も葉もないうわさが流れ、友達は減っていった。それでも友達でいてくれた奴らとは高校まで仲良くしていた。一緒に勉強して、一緒に遊んで、一緒に泣いて過ごしていた。


 そんな時間が経てば次は受験が待っている。進路は理系科目が得意だったのでそっち方面に進む。友人たちと必死に勉強したおかげか日本では有名な大学に入学できた。


 大学生活は一言で言えば気楽だった。なにせ弟妹は出来が良くなかったのか同じ大学に進むのはかなり難しく、平穏な大学生活を送れた。嫌がらせで両親が学費について一切援助してくれなかったが、国の奨学金や大学自体が運営している奨学金などで十分学費をねん出することができていた。


 次に大学院に進むとある技術について研究し始める。その技術で大成できると考え、大学院を卒業すると中学高校大学と株やデイトレード、仮想通貨で稼いだ金で自分の研究所を立ち上げた。


 そして研究所を立ち上げ数年後、遂に新技術が完成し、特許を得て大金が手に入る寸前で交通事故にあった。







 そして次に目が覚めたら満点の星空が上下左右に見える不思議な空間で真っ白な球体と会話をしていた。










「で、その交通事故は君の友達がやったね」


 ちなみに犯行に及んだ理由はなんだった?


「おや?予想はついているんじゃないの?」


 予想はできても真相はわからないんだ。


「一言でいえば嫉妬、君の頭脳に嫉妬してやったことだね。彼もかなり頭が良かったんだが、君には及ばなかった。それだけならいいけど、このままじゃいつまでも君の後ろにいると考えて今回の犯行に及んだんだね。ちなみに君に近づいたのも君の実家が大企業で甘い汁が吸えるかなと考えてきたみたいだよ」


 ……それは知っていたさ。それでも友達だと思っていたんだがな。


「おっはじめて君から感情が出てきたね、それじゃあ本題に入ろうか」


 そうだな、俺は地獄行きなのか?天国行きなのか?


「本来はどちらかなんだけど今回は違うよ」


 違う?


「あれ?知らない?サブカルチャーとかの異世界転生もの」


 ……図書館の一部になぜだか置いてあったあれか。


「知っているみたいだね、死んだ人間を別の世界に転移、転生させるやつだよ」


 じゃあなにか、俺は生まれ変わるのか?


「呑み込みが早くて助かるよ、君の魂が歪んだせいでこの世界の輪廻の輪に入れなくなってしまったんだ」


 それって解脱ってことか?


「そうじゃないんだ、例えるなら本来まっすぐの棒が衝撃で曲がってしまいまっすぐな穴を通れなくなった感じだな」


 ……なんとなくだが分かった。


「わかったようで何より、何か質問ある?」


 俺はどんな世界に転生することになるんだ?


「そうだな魔力や魔法などが発達している世界だね」


 魔力……それはいったいなんなんだ?


「残念ながら答えられない」


 じゃあ、俺は人間に生まれ変わるのか?


「そうだよ、正確には君が入れる器は魂が曲がったことにより人間に限定されているんだよ」


 俺は魔法を使えるのか?


「うん、使える」


 その世界の常識を教えてくれないか?


「それは後々に全部教えるよ、とりあえず気になったことを聞いてみて」






 それから俺はいくつもの質問を投げかける。







「ほかにまだ疑問はある?」


 思い浮かばないから先に進んでくれ。


「OK~、じゃあ基礎知識から教えるよ。まずあの世界ではステータスというものが絶対の指標になっている」


 ステータスだと?


「そうこんな感じ」


 ――――――――――

 Name:

 Race:

 Lv:

 状態:

 HP:

 MP:


 STR:

 VIT:

 DEX:

 AGI:

 INT:


《スキル》

《種族スキル》

《ユニークスキル》

 ――――――――――


 目の前にこんな表示が現れる。


「とりあえず説明するね、まずname名前race種族、状態は名前のままだから省くね。


 まずHP、これはゲームとかでもあるようにこの数値が0になったら死亡する数値だ、生命力と言ってもいい。


 次にMP、これも知っているかな?これは魔力量を現す数値だよ。これがゼロになると体がだるく感じる。ほかにもゼロの状態から魔法を使おうとしたら気絶するから注意してね。


 STR、VIT、DEX、AGI、INT、これは筋力、耐久力、器用さ、敏捷性、知能の数値だよ。


 筋力はそのまんま体の筋力の値。


 次に耐久力、これは外からの衝撃にどれだけ耐えられるかの数値。


 次に器用さ、これはどれだけ思い通りに体が動くかの数値。


 敏捷性、これは反応速度と言ってもいい、数値がでかくなれば銃弾が止まっているように見えるようにもなる。


 最後にINT、これは知能指数のことじゃない、簡単に言うと記憶力に直結する数値だ。これが低かったとしても頭が悪いとかじゃない、ただ少し物事を思い出しにくくなるぐらいかな。


 最後に『スキル』についてだけど、まぁこれは向こうに行ってから試してみてよ」


 スキルについてはそれだけか?


「まぁこっちじゃ表現できないし体験してみるのが早いと思うよ」


 表現できない?


「まぁ試してみ~、それより話を続けるよ。種族スキルはその種族全体でできるスキル。ユニークスキルは個人のみが持っているスキルだ。ここまで質問は?」


 生命力の定義は?


「生命活動できるまでの数値だね、1でも残っていたら命に問題は無いよ。まぁここまで生命力が削られているなら怪我の継続ダメージで0になりそうなものだけどね」


 怪我をすると継続ダメージが入るのか?


「その通り、正確には血を流して体液を消費してしまうとHPが減ってしまうのさ」


 ……じゃあレベルの概念を教えてくれ。


「レベルは成長する指標さ。生物、もっと言えば生命を殺すことによって、その生物が持つ、魂素というものを吸収して魂の位を上げるのさ」


 魂の位が上がればどうなる?


「全体的に身体能力が向上するね」


 上昇する数値はどうなっているんだ?


「基本的に訓練と同じだね、負荷を与えた場所が重点的に伸びる。多く傷つき回復すればHPとVITが伸びるだろうし、何度も筋トレしたらSTRが上がったり、器用なことをしたらDEXが上がる、早い動きに慣れればAGIが上がり、勉強すればINTが上がる」


 これはレベルアップでしか身体能力は上がらないのか?


「別にそんなことなくて、普通の訓練でも上がるよ。でもそれはほんの微々たるもので、レベルアップの方が楽だし確実だよ?」


 そうか、では魂素は殺した者しか吸収できないのか?


「魂素の吸収はHP、生命力を削った割合で決まる」


 なるほどな……やっぱりレベルも高くなれば上げにくくなるのか?


「うん、成長すればするほど上がりにくくなる」


 ならレベルが低いときに効率的に訓練しとかないとな。


「そうそう、なんなら効率的な訓練法を教えようか?」


 対価は?


「そうだね、じゃあ君の人生で楽しましてくれるならいいよ」


 ……いいだろう。


「じゃあ知識を教えとくね」


 突如、俺の頭の中に知識が入ってくる。


「じゃあ最後に君の対価を支払ってもらおう」


 なんのだ?転生するためのか?


「ちがうよ、転生はタダで行ける。これは君の特典のさ?」


 特典?


「そう、まぁこれが本題だね。この場所はユニークスキルの選定の場なんだよ」


 ……どういうことだ?


「よくあるでしょ?ラノベとかで転生する際にチートをもらったりとか」


 確かにあるな。これがそれなのか?


「そうだけどユニークスキルもただではないよ」


 何を支払う?


「今、君が持っている物ならなんでも。記憶でも寿命でも知識でもだ」


 文字通り何でもか…


「そう、その対価とつり合いが取れるようにユニークスキルを準備させてもらうよ」


 ……じゃあ、俺が支払うものは。








 こうして一人の男が異世界に旅立っていった。

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