紅い記憶。




太陽が昇り、雀が交 尾の為ちゅんちゅんと鳴いていた。





それを合図に、女は起き上がった。





頭が、痛い。





そう呟き乍ら。





まだ気持ち悪い感覚が残る中、組服スーツを身に纏い、鏡の前で確認する。





朝御飯は要らないなと思い、其の儘家を出た。





草一本揺れぬ日だった。





嗚呼、今日も私は生きている。





時々そう思う。





マフィアに入ってから、数年が経った。





この世界は、昨日まで普通だった奴が、居なくなったり、





仕事熱心にしていた奴が、消えてしまったり。





そんな事は、当たり前だった。





私はこの世界で生きている。





しかし、それは、私のほんの一部でしかないのだ。





嗚呼、そういえば。ふと思った。





あの美しい景色は、何処いずこへ行ったのだろうか。





若しかしたら、夢の世界かもしれぬ。記憶なのかもしれぬ。





ただ、分かるのは、其れは私の脳味噌を飽和していることのみ。





今日は、向かい風が強いように感じる。








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