第107話


「──最後でええから、聞かせて」


 ──ななちゃんは、俺のこと、好き?


 辛うじて聞き取れるほどの小さな声で、そう問いかけた。



「……"晴"が、大好き。これから先、おじいちゃんとおばあちゃんになっても一緒にいたいって思うくらい」


「……俺に、ななちゃんの未来、全部くれる?」


「うん、全部持ってって」


 私の過去は変えられないし、“ハル”を愛した事実はなくならないけど。



「……ななちゃん。俺と幸せになって」


 彼と過ごした何倍もの時間を、これから紡いでいこう。

「……うん」


 これからも何度もヤキモチを妬いて、私を困らせるだろう。


 素直になれなくて、何度も晴を困らせるだろう。



 それでも

「また泣くし……」

「しゃーないやろ!?気持ちが追いつけへん!これでななちゃんは正真正銘、俺のもんや」



「……迎えに来てくれてありがと。晴は私の王子様だもんね?」

「……そーやで。姫さん」




「……だいすきだよ、晴」


 ちゃんと君に伝えたら、あんなにも“幸せ”に満ち溢れた瞬間が待っていると分かったから。


「……っ」

 やっぱり、幸せそうに泣く君が誰より愛しい。



「俺は愛しとる!」



 これからも、幸せだけで泣こうね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る