第85話
「ね、晴じゃなく俺のこと好きになってみる?ななちゃん♡」
……やば。これはキュン死案件だわ。
「やばーい……心臓バクバクだよ……」
心臓をおさえて耐えていると隣からブチッと何かが切れる音がした。
「祥太あああ!!そろそろホンマにしばくで!?」
「うわ、やべ。キレた」
祥太くんの胸ぐらを掴んで揺さぶる。それでも祥太くんはニコニコしている。強者だ。
「ななちゃんもなに口説かれてんの!?あかんってほんまに!ちょっと目離したらこれや!」
申し訳ないけど、私だってイケメンは好きなんだよ。
「イケメンは目にも脳にもいいんだよ。癒しだから」
めちゃくちゃな理論を展開する私に、ブッと噴き出した祥太くん。悪い子だな。
「ほな、ななちゃんは毎日めちゃくちゃ癒されてるやろ!?俺で!」
「出たよナルシスト」
「これ以上癒されたらドロドロになんで!?」
「いや、意味わからん……」
私の理論もめちゃくちゃだったけど、その上を行く晴。
「そんなん嫌や!ドロドロのななちゃんなんて……」
首を横に振って眉を下げる。可愛いかよ。
「嫌いなんだ?」
「……好きやけど!!」
「わーお」と拍手する祥太くんが負けないくらい可愛いわ。
「俺以外で癒されたらあかん!!」
そんな私の思考を読み取ったのか、私の目を手で覆う。キラキライケメンが見れないだろ。
「ほんと自分の顔面に自信あるよね……」
呆れたため息が零れる。まあ、それも仕方ないくらいの顔面クオリティだけどさ。
「イケメンやないと……ななちゃんは振り向いてくれんやろ?」
しょぼんとする晴。イケメンは好きだけど、別にイケメンと恋がしたいわけじゃないんですが。
「や……別にイケメンだから好きになったわけじゃ……あ」
まずった。失言だ。ほとんど言い終わってから気付く自分にビンタしたい。
「え!?なに!?もっかい言うて!!」
私のセリフをこの地獄耳男が聞き逃すわけもなく。
「……なんでもない」
「マジかぁぁ!?くそ可愛いやん!!祥太見んなや!こんな可愛いななちゃん絶対見せへん!」
晴に全力でバシバシと肩を叩かれてる祥太くん。痛そうだけど、それでも笑顔なのすごい。
「へー。晴が惚れるわけだねえ。こりゃ可愛いわ」
本日二度目の“かわいい”を頂きました。褒めても鼻血しか出ませんよ。
「今すぐ記憶抹消せえ!!」
「やだよ!ななちゃん、やっぱ俺にしとかない?」
「あわわわわ……滅相もございません……」
「照れんなって!もおお!!ホンマ!!」
だめだ、もうカオス。二人の掛け合いが絶妙すぎる。
祥太くんが何か思いついたような表情でこっちを見た。悪戯を思いついた子どもみたいで、もう何度目か分からないけど言うね。かわいい。
「祥ちゃんって呼んでくれる?」
「しょーちゃん……」
復唱しただけなんだけど、晴が隣で崩れ落ちた。
「頼むから!!かわええからヤメて!!」
「うーわキュンッてきた」
今度は祥太くんが胸をおさえてる。君が呼んでって言ったんじゃん……。
「俺はギュンやわ!」
「そんなとこで張り合わないでよ……」
なんだかんだ、仲がいいってことなんだろうな。
「あ、そろそろ行かなきゃ。またね、ななさん」
可愛く手を振ると、ハイタッチ。ぼんやり触れた手のひらを見つめていたら、晴が唸りだした。
「……いい子だね」
当たり障りのない感想を伝えてみるけど、晴は納得するわけもなく。
「……もぉ知らん」
と拗ねてしまった。
「ごめんってば」
「……ゆるさん」
「えー……」
「ななちゃんなんか、ブサイクと結婚してしまえ!!」
「……は?」
「アカン!!やっぱ今のナシ!!」
「……」
「ななちゃんと結婚するのは俺やん!!」
「……」
……よく分からないけど、今日も晴は通常運転ってことで。
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