第42話
ななちゃんの実家も詳しく聞かんと上京して行き当たりばったり状態で、見事ななちゃんと再会できたのはホンマに奇跡やと思う。運も味方につけた俺、凄ない?
我ながらムチャクチャな理屈でななちゃん家に押しかけたまではええんやけど。どーやったら俺に落ちてくれるんか、毎日試行錯誤を繰り返しとった。
「あれ、ななちゃん?」
大して行ってもないサークルの飲み会。客寄せパンダみたいに名前だけでもって言われて入ったのはええけど、飲み会はなぜか俺だけほぼ強制参加。寄ってくる女がうっとおしいから、両サイドの席は必ず男友達にピッタリ貼りついてもらっとる。
一旦お開きになったけど、二次会に行くやらで盛り上がっとる皆を横目に、ふと向かいの歩道へ目を向けると、見知った顔──俺が世界で一番大好きな女の子が歩いとるのが見えた。
ラッキー!ななちゃんに会えた!
大声でななちゃんを呼び止めようとした、その時。
「……なんや、あの男」
ななちゃんの横におる、背が高くてスタイルのいい、スーツが似合う大人の男。ここからやとよく見えんけど……多分顔もいい。
ななちゃんはいつものふにゃふにゃの笑顔をソイツに向けとる。あー腹立つわ。
「ねえ、晴くん」
特に可愛くもない猫なで声が、うっとおしい。ななちゃんに気を取られて、知らん間に隣に立っとった女。チラッと冷たい視線を送れば上目遣いを武器にしようとしとる。カラコン、ズレてんで?イライラ最高潮の俺に話しかけるって、ええ度胸やな。
「……何」
一応、優男を目指しとる俺は返事するけど。視線はまた、ななちゃんへ。はよ話終わらせてくれな、見失うやろ。
そんな俺の考えなんか気にもしてへん女は
「晴くんは好きな人がいるんだよね……?」
「……そうやけど」
「でも振り向いてもらえないんだよね?」
なんやねんコイツ。人のこと言えんけど、デリカシーってもんを知らんのか。
「アンタに関係ないやろ」
「……私を利用してもいいよ」
「……は?」
意味がわからん言葉に思わずソイツへ目を向ける。女はそんな俺の行動を“興味を示した”と勘違いしたらしく、にやりと笑った。
「その人の代わりにしてもいい。物分かりはいいつもりだよ。それか……私と一緒にいて、その人がヤキモチ妬くか試してみる?」
訳わからん提案。ななちゃんの代わりやと?アホちゃうか。女の自信に満ち溢れた表情を鼻で笑った。
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