第23話



「絶対、好きになるに決まってるやん」

 きっぱりと言い放つ。



「堂々と俺のやからって言うて、他の男なんか近づけさせへん。俺も女の子を遠ざけれるしな」


「やだよ!体育館裏フラグでしょそれ!」

 想像しただけでゾッとするわ!この間、大学でも視線が痛かったのに!?


「いつの時代の少女漫画やねん」

「私のバイブルに謝れ!」


 ははって笑った晴が「ホンマななちゃんっておもろいわ」なんて言う。



「……しかも私みたいな地味子を彼女にしたらさらに告白されるでしょ!『私でもいける!』って思うじゃん、みんな!」

「でも俺ななちゃんしか無理やからなあ。断る理由になるやん?今まで好きな人おるて言うても信じてもらえんかったからな。ホンマに実在する女なんか?って詰め寄られたこともあったわ。紹介せえって言われたこともあったし。やっぱ近くにおると信憑性あるわあ」


 キラキラとした子どもみたいな目でそんな風に妄想してる。ちょっと可愛い……かも。




「……それに、同じ年なら──ななちゃんが俺と付き合われへん理由がいっこ減るやん?」


 一瞬、時が止まったみたいだった。


 もしも、同じ年なら。そうでなくても、年の差が2個や3個だったなら。私はこの男の重いと言わざるを得ない愛情を、素直に受け入れたのだろうか。



 橘くんの言葉が頭を掠める。



 ──ってことはもう惚れてんじゃない?その子に。


 ──頑なに年齢に拘るってことは、そこ以外断る理由が見つからないからだろ?




“年の差”という重い枷が外れた時、私が晴を拒む理由は──。




「……それでもやっぱり、私は晴と付き合わないと思うな」

 傷つけたのは分かってる。でもこうでも言わなきゃ、期待させるでしょ?それに……私自身が、なんだか、制御できなくなりそうだ。


「……そか!ほなやっぱり、今のままでええわ」

 そう、今のままで。それが一番、心地いい。

 それ以上も以下も、嫌だった。

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