第22話


「アルバム、見せてや」

 そんな晴の希望でソファで二人並んで座って、私の卒業アルバムを眺める。


「……俺の知っとるななちゃんとあんま変わらんのやな」

 それは褒め言葉なのかな?ちらりと彼の横顔を伺えば、どこか安心したように笑っていた。



「……晴はさ、年の差を気にしたことないの?」

「は?」


「好きになったのがこんな年上で、悩んだことないの?」

 ただの純粋な疑問だった。いつだって気にする素振りは見せない。むしろ気にする私のことを「しょーもな」って言ってるくらいだったから。



「……そーやなあ。俺がもっと早く生まれたらよかったのに、とか、もっとななちゃんと年が近かったら……とは思ったことないな」

 少し上空を見て何かを思い出すようにポツリポツリと話し出す。


「もう少し年が近かったら、きっとカテキョなんかしてもらうこともなかったわけやから。東京生まれのななちゃんと大阪生まれの俺が出会うこともなかってんで?」


 ……ごもっともだ。きっとどちらかが生まれるのが1年でも違っていたら、出会うこともなかった。それくらい、奇跡的な出会いをしたんだって思う。


 ……運命とか、そんな綺麗なものだとは思ってないけど。


「せやから俺は、この6個の違いさえも愛おしく思えるわ」

 この深い愛情はどこから生まれるんだろう。もう一度、見上げた晴の横顔はやっぱり悔しいくらいに整っていた。


「俺が俺で生まれてきたおかげで、ななちゃんと出会えたんやから。俺はこの人生にも顔面にも感謝してん」


「顔面もかよ」

「当たり前やろ」

 勝ち誇ったようなドヤ顔がまあまたカッコいい。そんなこと、調子に乗るから絶対に言ってやらないけど!!



「……でもまあ、ななちゃんとクラスメイトんなってみたかったとは思うけどな。同じ制服着て、同じ教室で、同じ授業聞いて。それができるんやったら、同い年もええな」


 絶対に叶わない。でも想像するのは少し楽しい気がする。同じ年なら?そもそもカースト上位にいるはずの晴と地味系女子な私が関わることなんてあるのだろうか?そんな疑問が口を突いて出る。

「……こんな地味なクラスメイト、晴が相手にするとは思わないけど」

 卑屈になる私にも、きょとんとして。

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