第19話
「高野くん……!」
そのタイミングで同じ年くらいの女の子が話しかけてきた。慌てて晴から離れる。
「あ?なに?」
邪魔されたのが気に食わなかったのか、イライラしてる晴。ガラ悪いってば!と肘でつんつんと突けば顔を顰める。
目の前の可愛らしい女の子は晴のことが好きなんだろう。仮にも同じ女子だから、その照れた表情や仕草で分かる。
「その人、お姉さん?」
……まあ、そう見えますよね。分かり切ってることだから私は別にショックでも何でもないんだけど、晴にとっては地雷だったらしい。
「ふざけんなよ。アンタには関係ないし、この人は俺の好きな人やから。それ以上言うたらマジでブチ切れんで?」
その迫力には私も驚いた。怒鳴り散らしたりはしないんだけど、静かな怒りが手に取るようにわかって、目の前の女の子も顔面蒼白で逃げるように去っていった。
おお……イケメンの怒った顔って迫力あるなあ。
「これで言い寄ってくる女も減るやろか~」
なんて呑気に言った晴にため息をついた。
「あんた、そんなので本当に彼女できなくなったらどうするの?」
……あ、しまった。また無神経なことを言ってしまった、と後から後悔しても遅い。
「……ななちゃんが、なってくれたらええやんか」
傷ついたような顔をするからやってしまったと頭を抱えた。
「俺はななちゃん以外と付き合いたいって思わへんのに……まだ、分かってくれんの?」
弱々しい声に慌てて謝るけど彼は首を横に振る。
「許さへん。今日も一緒に寝てくれな、許さへんから」
子どもみたいなお願いに、可愛いと思ってしまった自分の頬をぺちんと叩いた。
「……帰ろ」
何気なく、晴の手を引いて歩きだせば「ちょぉっ!?ななちゃん!?」と少し焦った声が後ろから聞こえる。私は繋いだ手を離すタイミングも逃して、無言で歩き続けた。
「……ななちゃん。傘貸して?」
一歩先を歩く、何も言わない私の手から傘を取って、私が濡れないようにさしてくれる。ふと振り返ったら晴の肩はずぶ濡れで、慌てて隣に並んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます