琴乃家の日常 2nd Season

小糸匠

第17話 いつかはきっと。愛央の思い!

6月1日火曜日。私立方南高校の制服は完全夏服に移行した。現在時刻は4時30分。俺はこの時間に起きていつものように朝飯を作る。


今日からうちの妹、琴乃愛央ことのあおは5時30分起床になる。1時間で朝飯を作り、愛央のヘアスタイルを考えなければならない。果たして琴乃匠ことのたくみの意地は出せるのか。


5時00分30秒、朝飯が出来た。30分で朝食を作るって、何気に難しい。


そこからおよそ30分後、愛央が起きてきた。


制服に着替えて部屋から出てきた愛央は、青のチェックスカートに紺色のニットベストと青いリボンを付けて、俺のキーボード台へ行き、キーボードである曲を弾き始めた。その曲とは、愛央が中学2年生の頃に作った歌、自分への応援エール。愛央が1人で不安だった時に、自分で自分を応援したいと思って作ったチア風の曲である。ピアノが得意な愛央だからこそ出来る作曲で、自分を励ましたいということだ。


愛央は1番だけ弾き終わると、「フレ!フレ!わたし!ふぁいと!ふぁいと!わたし!」と言って愛央の好きな赤色のメタリックポンポンを輝かせた。


朝ごはんを作り終えるといつものようにあいちゃんがぐずり出す。朝のグズグズは全部ミルク。愛央は銀色のポンポンに持ち替え、俺とあいちゃんを応援しはじめた。


あい「うわぁぁぁん!」

たく「おはよーあいちゃーん。よしよーし」

あお「フレ!フレ!たーっくん!だいじょぶだいじょぶあーいーちゃん!」

ウインクをして制服×銀チアを見事披露した愛央はいつものように可愛かった。

ちなみに愛央のチアには別名があり、デート服でチアをするとデートチアだったり、ポンポンの色でも○○×○チアという名前がつく。左に服装、右に色がつくように名前を付けるのが愛央のわかりやすい点だ。


制服銀チアを終えた愛央は2回目の応援をするが、愛央は家に帰ってきてから応援するね!とだけ言った。愛央はプロではないけど本物のチアリーダー。そんな可愛い妹があとで応援するって本来ありえない話だろう。でも愛央は毎日必ず2回応援しないと気が済まない。好きにさせようかなって俺は思った。


午前7時45分。3人で自宅を出て、まずは保育園へ。

体育祭以後、あいちゃんも普通に保育園へ毎日行くようになり学校に来ることはなくなってしまった。俺と愛央は少し寂しい気がするが、まぁいいか。


保育園に到着し、あいちゃんを送り出したあとは愛央が彼女感丸出しで俺と高校へ向かう。

双子の妹だが見た感じは彼女と思われてもおかしくないのだ。揺れるプリーツスカートの愛央を横目に俺らは教室へ入る。そして5時間の授業を終えたのだった。


今日はチア部の活動日。愛央は部活に行ったが・・・なんと俺はまた連行。毎週金曜日にしか鉄道研究部がないので、愛央の部活の日に連行されることが何回も起きた。愛央がチアリーダーとなる条件はただ一つのようで、俺がいないとチアリーダーにはなれないらしい。愛央ってマジで俺を応援するんだね。


体育館で他のチア部の生徒が夏の野球応援の練習をしていた。愛央はチアユニを着て、赤いポンポン持つとチア部のメンバーを全員呼んで、俺を囲ってハートのポンポン文字(?)を作って写真を撮った。

何がしたいんだよこいつらと発達のホンネが出そうになるが、愛央は耳元で囁いたのだ。


あお「たっくんに甘えすぎて愛央が頑張らないとって思ったの。だからね、『いつかはきっと』愛央も素敵な女の子になるね」

たく「うん。『いつかはきっと』愛央が何か新しいことをしようと思えばできるよね」

あお「うん!愛央、チアの練習やってくるね!」


某アニメ某キャラのセリフと歌詞が出てきたがまさに愛央の思いが俺に伝わってきた。


チア部の練習を終えた愛央とそれを見ていた俺は保育園へ向かって、あいちゃんをギューしてから3人で帰った。愛央は家に着くと自分のことを応援し始め、新たなことへの挑戦に門出の赤チアをやったのだった。

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