第6話 冒険者

 僕は道中で出会った三人の冒険者と一緒に目的地であるノルデン帝国に到着した。

 ノルデン帝国は君主制で皇帝の自己中のせいで色々と問題ありだが、僕としては特に問題でも無いので此処をこれからの拠点にすることにした。


 グレイが続いて案内する。


「さて、あとは冒険者登録ですね。冒険者に関する質問は受付の人に聞いてください。登録だけなら誰でも簡単に出来るので、登録が終わったらギルド前で合流しましょう」


「合流? 君たちはどこかへ行くのかい?」


「ええ、まだ終わっていない依頼がありますからね。俺達も終わり次第迎えにきますよ」


 僕は冒険者の登録をするために三人と別れた。冒険者ギルドはしっかりとした石造りの二階建ての建物だった。

 建物に入れば恐らく他の冒険者かな? わいわい酒で騒いで愉快だねぇ。


 そして冒険者登録。それを請け負ってくれる受付の女性なのだが、これといって言う所無しな誰が見ても全方位的に美しい人だった。

 んー異世界といえば冒険者。冒険者といえばギルドがあるが、この受付嬢とやらは大体こういうパターンが多いよね。まぁ美人だからって悪い気はしないが。


 僕は受付嬢に話しかける。


「こんにちは。冒険者登録をしたいんだけど……」


「はい。冒険者の登録ですね。身分証を発行しますので通行証の提示をお願いします。こちらは冒険者用の身分証です。職業毎に身分証が分かれているのでご注意下さい」


 身分証は全共通では無いんだねぇ。あくまでも身分証を発行するために通行証が必須という訳か。そしてその通行証は正規に何処かの生まれであれば必ず国や街で発行され、『持っていない』というのは決してあり得ない。

 グレイが僕のことを通行証を無くしたと嘘を付いてくれたことから僕はこう察するね。


 僕は受付嬢に通行証を渡すと、受付嬢は通行証に「冒険者身分証を発行」と声を発すれば、すぐに身分証なる物が精製された。

 鈍く銀色に光る鉄プレートだった。ただ何も文字は彫られていない。


「はい。こちらが冒険者用の身分証になります。この紐を首に結んで肌身離さず大事に持っていて下さい。

 これはスチールプレートです。冒険者ギルドは実績次第でランクが決まります。そしてそれら全ての実績情報は通行証に記録されるので不正はすぐに分かるので絶対にやめてくださいね。

 ランクはスチールからブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ダイヤモンドという六つのランクに分けられます。これを冒険者ギルドの依頼掲示板にて依頼を完了させて実績を稼いで上げていきます」


 身分証はあくまでも自分は何に属する物なのかを証明する物であり、通行証は国に入ることに必須だが、それ以外の凡ゆる行動を記録してくれるようだ。

 たしか魔式だったかな。どんな原理かはわからないけど不正も簡単にできないとはきっと複雑な作られ方をしているのだろう。


 受付嬢は続けて説明する。


「ただ全ての依頼を好きに受けられる訳ではありません。依頼にも難易度が決められており、条件を満たさなければ依頼を受ける資格を得られないのでご注意ください。

 依頼難易度はF〜Aまでが基本となり、現在のスチールはFのみ。ブロンズはE〜C、シルバーはB〜A。最終的にシルバーランクに到達していればF〜Aまでの全ての依頼が受けられます。

 ゴールドランクからは高難易度の依頼を受ける権限が得られ、Aより上位。S〜SSS。プラチナランクの時点で難易度SSSの権限を獲得出来ます。

 そして……ダイヤモンドランクになれば超高難易度の依頼解放と様々な特典が用意されていますっ」


 依頼難易度と冒険者ランク。これも良くある設定だ。僕はあくまでも生きる為に冒険者になる訳だから別に高ランクも目指さないし、軽い気持ちやっていこうかな。なにかきっかけがあるなら目指してもいいけどね。


「うん。説明ありがとうお姉さん。じゃあ最後に冒険者として働くことにおいての注意点はあるかな? 僕は平穏に過ごしたいんだ。何か違反や失敗をして不評を広げたくない。出来るなら他の冒険者とも仲良くなりたいんだ」


「そうですねぇ。それを踏まえた注意点なら……依頼の失敗と依頼者との信頼関係ですかね? 基本的に依頼失敗となる条件は受注者が命を落とすか、依頼を期限以内に終わらせられないことになります。そうなれば勿論報酬もありませんしペナルティーも付与されます。依頼失敗のペナルティーは、一時的なランク格下げと報酬の減少です。

 ランクの格下げはシルバーランクから適用され、ランクが高ければ高いほど報酬の減少幅が大きくなります。

 そうなれば必然的に依頼者との信頼も薄くなり他冒険者との関係も悪くなるでしょう。特に依頼者の信頼はギルドに依頼が来辛くなる理由にも繋がるので、決して無理せず、自分のこなせる依頼を確実にこなしていきましょう」


 至極当たり前のことか。依頼がこなせないのなら依頼者も不安になってしまうからね。それに恐らく指名制の依頼もあるんだろうけど、殆どがギルド全体に向けた依頼だろう。

 もし何度依頼しても失敗続きになっては依頼者もギルドに対する信頼を失くすという訳だ。

 ふむ。これも頭の片隅にしまっておこう。別に命を危険に晒す必要なんて無いからね。


「なるほど。よーく分かった。身分証の発行ありがとう。じゃあ僕は冒険者との約束があるので失礼するよ」


「はいっ。いってらっしゃい。冒険者ライフを是非楽しんで下さい!」


 僕は踵を返し、冒険者ギルドの外へ出た。と言ってもまだグレイ達は帰ってきていないようなので少し暇を潰すことにした。

 なにかする訳でもないけどね。

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