人形劇-(未定)-

月光と紅茶

再開を願って プロローグ

 ―――ある時のある所で女の子は母の帰りを待っていた。


いたいけな心でただ母帰りを待っている


そんな一途な想いが実るかのように玄関の扉は開き、母親が入ってくる


そんな毎日の出来事もその子にとっては幸せな思い出になる


だけどその日はいつもと違っていた


母親の荷物に大きな、馴染みのない紙袋が一つ


「ワクワク」と女の子は高鳴る気持ちを隠せない


「ママ、その袋はなあに」


母親は答える


「これはね、いつも良い子にお留守番していた子へのご褒美よ」


 その声は疲れながらにも取り繕った声だったなと今になっては思う―――




 少女は目覚める。見ていた気がする夢の続きも思い出せない眠気まなこで枕元に置いてあるデジタル時計を確認すれと、いつもより二時間、いや三時間は早く起きてしまったようだ。

 もう一睡でもしようかな。そう思ったけれどカーテンの隙間から覗く、まだ赤い太陽を見て夢現にも心躍らせる。


 少女の名前はアミー・ベイリー。

ドールロイドを主とした玩具屋、タイプライターでアルバイトをしている高校生。

 彼女の夢は自分にとって最高のドールロイドを見つけること。


 立ち上がり布団を退けて、カーテンを開けた。朧気に空と街を見つめていると、太陽は少しずつその赤みを失い、街は単調な赤から色付いていく。

 所々キラキラと輝いているそれは雨上がりの街。

どうやら寝ている間は雨が降っていたようだ。

 見慣れない景色にときめく。

きっと今日は何かが起こる。夢見がちなアミーはそう確信していた。

 到底起きそうもなさそうな妄想を広げていると目覚ましが鳴る。

普段この時間には起きていないアミーは目覚ましがしっかりなっていたことに驚いていた。

それじゃあどうして私はこの時間に起きたことがないのだろうか。そんな分かりきった疑問を抱いていた。

 そうこうしていればいつも起きている時間に近付いていく。

今日は慌てまいと支度をする。そう、今日もアルバイトだ。




―――支度を済ませて玄関の扉を抜けるとほんの少しいつもと違う景色。

「今日はきっと特別な日」

だから階段で降りてみる。


 地に足つけると点々と水溜まりがある。


少女は水溜まりを踏んで跳ねる。その為に履いてきた長靴。


彼女が一歩踏む度に水面みなもに映る灰色の街が豊かに色付いていく。


 そんな幻想。


 そのままの足取りでアミーはタイプライターへ向かっていた。


「ベアトリーチェ」その合言葉をまだ思い出さないままで―――

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