売国王子ジャムシード
きょうじゅ
前
ハイ・エルフの王家に
今は治世に直接関わることなくただ権威的な立場に過ぎないとはいえ、しかし大陸で最も高貴な種族であるとされるハイ・エルフのこの慶事に、どの国もどの種族も沸いた。民衆は人々はセンテンティア姫を一目でも見たいと願い、多くの朝貢品を捧げた。
もっとも、誰もが知るようにハイ・エルフは非定住の民であるから、
ウッド・エルフの王からは、その年に醸されたうちでもっとも出来の良い
それは、大陸の東南ヴォクム王国の第三王子ジャムシードが、龍王ヴリトラを討伐して手に入れた
それと引き換えに、ジャムシードは彼のほかには魔王一人しか許されなかったセンテンティア姫との直接の謁見が許されることになった。ハイ・エルフは長寿の種族であるが、幼年期はヒト族よりも短い。流石にまだあどけなさが残ってはいたが、しかし既にして確かに美しい少女の姿で、彼女はジャムシードにその手の甲を差し伸べた。
「勇者ジャムシード。口付けを許します」
その声は決して優しくも温かくもなかった。だが、少女の幻映の如き美しさは、一瞬でジャムシードの心を奪い去るに十分であった。ジャムシードは少女の手を取り、恍惚とした表情で言葉を連ねた。
「センテンティア様」
「なに」
「お願いです。私の……私のすべてを、貴方様に捧げさせて下さい」
勇者ジャムシードは愚かであったが、決してヒトと交わらないハイ・エルフの姫に直接求愛の言葉を訴えかけるほどまでのことはしなかった。何故なら、それは無論、無意味だからである。
「そう」
センテンティアは興味もなさげに、しかしこう続けた。
「ならばそうしなさい」
こうして、ジャムシードの運命は決まった。
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