命のあいうえお
間野 ハルヒコ
命のあいうえお
エドワード・ゴーリーの「ギャシュリークラムのちびっ子たち または遠出のあとで」という本がある。
1963年に刊行された、アルファベット順に子供が死ぬ物騒な絵本だ。
わたしはあの絵本が大好きでね。
趣味が高じて、似たようなものを自作してしまうくらいさ。
そうだ。
今日は天気がいいし、湿度も控えめで過ごしやすいから、ちょっと子供をさらってこようか。
さあ、始めるよ。準備はいいかい?
「あ」は
「い」は
「う」は
「え」は
「お」は
「か」は
「き」は
「く」は
「け」は
「こ」は
「さ」は
「し」は
「す」は
「せ」は
「そ」は
「た」は
「ち」は
「つ」は
「て」は
「と」は
「な」は
「に」は
「ぬ」は
「ね」は
「の」は
「は」は
「ひ」は
「ふ」は
「へ」は
「ほ」は
「ま」は
「み」は
「む」は
「め」は
「も」は
「や」は
「ゆ」は
「よ」は
「ら」は
「り」は
「る」は
「れ」は
「ろ」は
「わ」は
「を」と「ん」は見つからなかったから、名前のない子にしたよ。
×××くんはロッカー6ヶ月。
×××ちゃんはトイレでジャーだ。
うん。
みんな、本当にいい子だね。
おや?
こんなところに珍しいな。
††††††††††
いつかどこかにある駅で、古くさい服の男がこちらを見ている。
周囲にはたくさんの子供達がいた。
頭にうじが湧いている子。
腕が欠損し、両目を潰された子。
首から上がない子。
抱きかかえられたカタチのない赤子たち。
ああ、きっと。
みんな死んでいるのだろう。
「さぁ、行こうか。」
「幻影都市はいいところだよ。」
男が呟き、きびすを返すと、子供たちが続く。
縋るように、闇へ溶けていく。
STOP虐待。
今年の虐待による死亡事例は50件です。
(平成29年4月1日から平成30年3月31日まで ※心中を除く)
命のあいうえお 間野 ハルヒコ @manoharuhiko
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