大盛りのラーメン
バブみ道日丿宮組
お題:スポーツのラーメン 制限時間:15分
大盛りのラーメン
初めて訪れる場所で大盛りはやめたほうがいい。
「……ぐ」
だとしても青春時代の若者が普通盛りで満足できるはずもなく……。
「すっごい多いね」
涼しい顔でこちらを見てくる彼女の前にあるのはチャーハンの小盛り。
そう……小盛りというのがある時点で気づくべきだった。
「ま、まぁお腹に入れば同じだし?」
冷や汗が流れてきた。
冷房ガンガン聞いてるのにどうしたんだろう? あれかな、病気になっちゃったとか? 病気ならこの大盛りラーメン食べないほうがいいよね?
ほら、健康に良さそうな野菜炒め定食とかのがいいよね?
「早くしないと伸びちゃうよ?」
彼女は気にした素振りもせずにチャーハンへと向かう。
「だいたいお店の看板で家系ラーメンなのはわかってたじゃん」
「それはそうだけどさ……」
こんなにももやしと肉が山盛りになるとは思わない。
「少しだけなら食べてあげるから、半分以上減るまではまずは頑張ってみてよ」
肩を叩かれてた。
こうやって、精神鼓舞されたなら頑張らなきゃ恋人じゃないよね?
「頑張ってみる」
食事はスポーツだとスポーツ選手がいってた。
なるほど、自分のペースを作ってご飯をつつく。まさにレースともいえるかもしれない。
が……。
減らない。
減るビジョンが見えてこない。
どうしよう。
「手止まってるよ? まだ半分じゃないよね?」
頑張ってと手を握られた。
「う、うん」
初な私はそれだけでとくんと胸が高鳴り、もうちょっと行けそうな気がしてきた。
そうして、数分の格闘後。
ラーメンを見事に半分減ることに成功した。
「じゃぁあとはこっちがもらうから」
そういって彼女は空になった皿を私に、ラーメンどんぶりを自分側へと移した。
「つっこみはないんだね」
「だって……いつも超大盛り食べてるから」
「今日はデートだからちょっとやめておこうかなって思っただけよ。それなのにあなたが大盛り頼んじゃうんだもの。それでこっちが超大盛り頼んだらお店の人びっくりだよ」
確かにやせ細った彼女が超大盛りを注文したら、SNSの餌にする気なのかと思われることだろう。
「だから、あなたが残したのを食べようかなぁって思ってさ。どうせあなたそんなに食べれないだろうしね」
的中だ。
彼女の前だから良い格好しようという目論見だった。
「安くて量がたくさん食べれるなんてある意味幸せだよ」
ラーメンを啜る彼女はとても幸せそうだった。
お金がかかったからと彼女をとにかくいうことはできない。食べれなかった私がいけないのだから。
「デザートの杏仁豆腐も食べたいな」
「わかった。あとで注文するから」
「ありがと」
そうして数分後には空になった丼が一つ追加され、さらにデザート皿までもが井の中に吸い込まれていったのであった。
大盛りのラーメン バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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