ないしょの話
バブみ道日丿宮組
お題:フニャフニャの会話 制限時間:15分
ないしょの話
ないしょの会話を聞かれたとき、心底困った。
「ねぇーー」
扉を何度も叩くが返事はない。鍵はかかってないが、入る決心がつかない。
「聞こえない?」
かれこれ10分はこうしてるだろう。
それだけ彼女の精神に干渉したということなのだろうが、ひどい勘違いだ。
僕は確かに普通が好きだ。何も変わらない一般的なという言葉を愛してる。好きなこがそんなこであれば、嬉しいと語ったさ。だけど、それは理想形であって現実じゃない。
現実のLOVEは形にあらわせないのだ。
「僕が悪かったから……」
もうこれは侵入するしかないのかもしれない。
彼女は完全に拒絶してるわけじゃない。いつもの喧嘩なら鍵をかけて閉じ込めってる。今回は開くのだ。なら、答えは一つしかない。
「入るよ? いい?」
相変わらず言葉は返ってこない。
無返答を了承ととり、中に入った。
そこには布団を頭までかぶった彼女の姿があった。
「別に君の趣味を笑ったわけじゃないし、否定するつもりもない」
彼女の部屋は、魔女道具でいっぱいだった。とんがりボウシ、ほうき、かぼちゃのランタン、ろうそく、鞭、魔法陣がかかれたカーペット。カーテンには謎の十字架。ウサギの人形たち。
彼女は趣味が魔女っ子だった。
タンスの中も魔女道具でいっぱいだし、下着だって魔女特有のものを身に着けてる。詠唱呪文がひたすら書かれたノートすら存在してる。
「こんだけたくさん集められるのは大した才能だと思ってる」
「……でも、あなたは普通がいいんでしょ」
小声で彼女が返答してきた。
「そりゃ普通は普通だからね。でも、特別は特別なだけ価値があると思うんだ」
ベッドに近づき、腰を下ろす。
「僕は君と特別な関係になった。そこにはもう常識は関係ないんだ。二人だけの世界ができてるかもしれない」
「……それは普通じゃないよ」
「そうだよ。はじめから普通じゃないんだ。だから、君は君のままでいいんだ」
「……そうなの?」
ベッドの上から優しく撫でた。そこにまるで頭があるかのように。
「今日話してたのは、ないしょの話だったけど、もう過ぎたことなんだ」
「……なんで?」
「君と会ってしまってから、僕も普通じゃなくなったから」
すぅーと彼女が顔を覗かせる。
「……普通じゃないの?」
「あぁ、そうさ。君と同じ特別なんだ」
だから、普通じゃなくてもいいんだ。
ないしょの話 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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