供物

バブみ道日丿宮組

お題:どうあがいてもカリスマ 制限時間:15分

供物

「私が代表になるわ!」

 どんと机をたたき立ち上がり、彼女はいった。

 当然のように視線が集まる。

「私が汚れ役を引き受けるっていってるのよ」

 ざわざわと周りが騒ぎ出す。

 それは当然のこと。

 彼女がなろうとしてる汚れ役とは、そのままの意味で汚される係だ。慰めものといってもいい。

「私がやらなきゃ、誰か他の人が不幸になるわ」

 熱弁を振るう。

 肯定する声、否定する声は上がらない。

 ただただ彼女を畏怖したり、心配する視線を送るだけ。

 彼女はクラスでもトップを走るほどの優秀な生徒だ。しかも可愛い。美女というジャンルには当てはまらないが男子から何度も告白を受けてる。

「私がその代わりに不幸になるって? あそこに行ったとしても不幸にならないかもしれないわ。そこは私の行動次第ってことはあるけれど、絶対に壊れるわけじゃない」

 あそこーー野獣と呼ばれる人間ではないモノの住処。

 そこで食われるだけ肉体を食われる。

 そして壊れた道具のように肉体を返還される。

 病院送りとなった彼女らは未だに意識を取り戻してない。

 不思議なことがあるとすれば……肉体を食われたはずの彼女らには損傷がない。むしろ、みずみずしい肉体となってることのが多い。

 あそこでいったい何が起こり、結果として排出されるのか。

 答えは見つかってない。見つけようもない。

 彼らと人間には格の差がありすぎる。襲わないでくださいと、供物を差し上げることしかできない。

「そこ! ひそひそ話しない! いいたいことがあるなら、ちゃんと私にいいなさい」

 それからいくつかの話が持ち上がる。

 後悔はないのかとか、怖くはないのかとか、この学校にいてほしいとか。

 前に代表になった人間以上に声が多かった。

「大丈夫。なんとかしてみせるわ」

 それは空元気のようにも見えた。

「私ならきっと壊れない。あなた達にいい成果を作ってみせるわ!」

 僕はそれをただ眺めてくことしかできなかった。

 当然だ。


 本来であれば、順番的に僕が代表になるはずだったのだから。


 救われる。

 間違いなく僕はそうなるだろう。

「悲しそうな顔をしない! 誇りなさい」

 うつむいてた僕の目の前に彼女が近寄ってきてた。

「あなたの代わりに行くわけじゃない。私が私であるためにいくのよ」

 うんと僕は言葉を返し、彼女は行ってくるわと教師と一緒にクラスをでていった。

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供物 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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