誘拐

バブみ道日丿宮組

お題:幼い事件 制限時間:15分

誘拐

「……」

 昔もこうして、アスファルトに包まれた部屋に放置された記憶がある。

 あのときは財閥の令嬢としての価値があった。

 取引にはきちんと父はきた。

 けれど、命の保証はなくてそのまま撃ち殺された。

 私はといえば、街に放り出された。

 すぐに警察がかけつけてくれたこともあって、難なくを得たが犯人グループは捕まることはなかった。

「……」

 不幸の連鎖というのはいつまでたっても消えないらしい。どこまで行っても後をついてきて、離れない。それは親と子の繋がりのようなものかもしれない。

 私は……私はまた誘拐されてしまった。

 財閥の令嬢から、財閥を仕切る嬢に変わったことはあるが……どこに油断があったのだろうか。

 付き人はエリートを選んだ。また登下校は幼馴染までもが付き添ってくれた。通学ルートに問題はないし、学校にも問題はなかった。

 けれども、一瞬という僅かな時間を支配するものには効果はなかった。

 付き人は数の暴力にはどうしようもなく、銃を発泡するも無残に倒れた。

 眠らされた私は、牢屋のような部屋に連れ去られた。

「……」

 ついでと言わんばかりに連れてこられた幼馴染はなかなか目を覚まさない。どこか怪我をしてないといいのだけど。

 もしかすると交渉に利用されるかもしれない。

 それは……嫌だな。私の家の問題なのに……。

「……」

 幸いなことといえば、牢屋に入れられただけで手錠もなにもされてない。部屋の入口はさすがに施錠されてたけれど、なんとかして逃げるというこてゃできるかもしれない。

「……これでよし」

 こんなときのためにも居場所を通報して救助を求める発振器を靴に仕込んでた。それはすぐに送信モードへと切り替わった。リアルタイムで送信されるから、場所が変わっても平気だろう。

 問題はどういった手段で助けがくるかだ。

 人質がある以上、強くでれない。数も多い。それを伝える手段はない。

 出会って、見合って、さぁどうだ。

 運を信じるしかない。生きてきた13年ぶんの運をここで使うべきだろう。使い方は知らないけど、願うことはできるはずだ。

「……ごめんね」

 幼馴染が少しでも安らぐように膝の上に寝かせる。

 すやすやと眠る幼馴染の顔はここが危険な場所であるはずなのに、どこか安心できるものであった。

「……」

 必ず助けはくるから……そう信じて目を閉じた。

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誘拐 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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