魔王と四天王で、敵は合計何人でしょうか?
結局、二人少女による"土下座"+"涙"の合わせ技という、ヴェントのクリティカルな弱点を突かれ、彼女らを手伝うこととなった。
なお、仲間になるにあたって、しっかりとノルンから交渉が成され、"価値あるもの"を報酬としてもらうという約束になった。
「魔王城には、古今東西の財宝があると言います。その財宝なら、ご満足いただけると思います」
リスリスは、ノルンの表情を窺うように述べる。
「報酬は"成功報酬"のみ。前金や歩合による成果報酬などは無しという条件ですが、マスターよろしいですか?」
"
「乗り掛かった舟だしね」
ヴェントの返答に、ノルンは静かに頷いた。
「ベンベン様! ルンルン様! ありがとうございます!!」
イヴイヴとリスリスは、そのまま地面に潜るのではないか? と思えるほどに地面にひれ伏している。
「もうその土下座やめて!! そんなに気にしないでいいから!! あと、"様"付けも落ち着かないから!!」
イヴイヴはガバリと顔を起こす。
「では、ボクもマスターとお呼びしたほうが──」
「それは絶対やめて」
「そうです。マスターは私のマスターです」
ふんすと鼻息荒く、胸を張りながら宣言するノルン。そんなノルンに、"ややこしくなるからお止めなさい"とヴェントはやんわり苦言を呈した。
「わ、分かりました、では、ベンベンさん、ルンルンさん……、ボクのことはイヴイヴとお呼びください」
「私のことはリスリスと……」
相変わらず正座した状態の二人は、期待の眼差しでヴェントを見上げる。
「えーっと、イヴイヴさんとリスリスさん」
「「……」」
「イヴイヴ、リスリス、よろしく」
「「よろしくおねがいします!」」
二人は元気に応え、ヴェントはやれやれとため息を吐いた。
「ここってお城だったんだね……」
「はい、ハジハジ城という場所で、30年ほど前まではギリギリ王国の領地だったのですが……」
牛の四天王と戦った場所は、ハジハジ城という場所であった。
遺体を持って帰ることもできないため、イヴイヴ達は、亡くなった二人の仲間をハジハジ城の城壁外で埋葬した。
「魔王を倒して、きっとまた会いに来るから……」
地に膝を付き、簡素な墓標に祈りをささげる二人。
「ベンベンさん、ルンルンさん、行きましょう」
イヴイヴは立ち上がると、力強く述べる。その瞳には強い決意の色が浮かんでいた。
「行くって……、そういえば、旅の目的とか行先とか、聞いてなかった」
少女たちの土下座と涙に全力で絆されたヴェントは、目標も目的地も確認せずに同行を了承していた。
「今回の戦いで、ボク達はまだまだ未熟だと痛感しました。魔剣を持つ魔王は、ボクが持つ聖剣でしか倒せません。ですが今のボクの実力では……。なので、レベル上げをしたいと思います」
イヴイヴは神妙な面持ちで述べる。
イヴイヴ達は、元々女性4人パーティーだった。勇者イヴイヴ、法術師リスリス、戦士リアリア、魔術師サラサラ。
4人は最後の希望として、人類最後の王国であるギリギリ王国の王、エラエライ十三世が国中から集めた最強のパーティーメンバーであった。
しかし、牛の四天王モウモウとの戦いで、戦士リアリアと魔術サラサラは殉死。ヴェント達が介入しなければ、イヴイヴとリスリスも命を落としていただろう。
"ノルン"という強力なカードは増えたが、四天王との戦いで半壊していては、魔王を倒すなど夢のまた夢。ということで、イヴイヴは"レベル上げ"を行うこととした。
「登場する名前が特徴的すぎて、話の内容が頭に入ってこない……」
「でしたら、固有名詞を"
「こ、こう……?」
4人は最後の希望として、人類最後の王国である
しかし、牛の四天王
"
「いや、逆にわけわかんないから!! というか、僕たちの名前まで置き換えなくても良くない!?」
「……難しいものですね」
「……」
ヴェントは気を取り直し、話を続けた。
「そうすると、敵は魔王と四天王、なのか……。そういえば"牛の四天王"って言ってたっけ」
先ほどのモウモウは牛の四天王であったのだ。問題は、"牛"が四天王のが何人目で、あと何人残っているのか、ということだが……。
「実は、まだ1人目の四天王で……」
イヴイヴは申し訳なさそうに述べる。1人目の四天王でパーティーが半壊である。
(ということは、まだ3人も残っているのか……。確かに深刻だよね)
「四天王は全部で3人ですので、まだ、火の四天王と青の四天王が残っています」
「え? なんで3人!? 四天王なのに? っていうか統一感! 牛、火、青って、統一感なさすぎじゃない!?」
"四天王は全部で3人"という、ものすごいパワーワードの出現に、ヴェントのツッコミが空回りした。
魔王と四天王で、敵の合計は何人でしょうか?
答え、4人。
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