⑹地べたの鳥

 鉛色の空と黒い海の狭間から、夥しい点が湧き出す。

 それは丁度、死体に群がる蠅が飛び立つ様に似ていた。


 湊の転移後、航は水平線を一望する切り立った崖の上へ移動した。耳鳴りがするような猛吹雪の中、足元がふわふわして落ち着かない。


 手足の感覚が無かった。

 それが寒さによるものなのか、緊張によるものなのかは、分からない。


 迫り来る革命軍を眺め、ウルが怪訝そうに眉を寄せる。




「革命軍の総軍とは思えないが、斥候せっこうにしては多過ぎる。どういう編成の部隊なんだ」




 そんなこと、航に分かるはずも無い。ただ一つ分かるのは、自分たちは圧倒的に劣勢で、絶望的に無力だということだった。


 ジャングル奥地のゲリラ戦なら兎も角、障害物すら無いこの海岸線では、凡ゆる抵抗は意味を成さない。蟻が立ち向かったところで、象の行進が止まるはずも無い。


 だがーー。

 湊なら、何か出来るかも知れない。

 自分には思い付きもしない見事な方法で、起死回生の策を練ることが出来るかも知れない。


 波間に呑まれる木片のような村の人々を救出し、革命軍を退け、戦争を回避する。そんな夢みたいな方法があるのならば、賭けても良いと思う。


 革命軍の狙いは、恐らく、レグルスだ。

 彼が此処にいないことを知らせることは難しい。馬鹿正直に告げても信じないだろう。革命軍は草の根を分けてでも探し、村は蹂躙される。


 悪魔の証明をするくらいなら、別の事実を作った方が良い。

 ウルが白い粉を振り掛けると、その姿は陽炎のように歪み、見る見る間に別人へと変身していた。輝くような金髪、深い藍色の瞳。見掛けは完璧に、レグルスそのものだった。


 風魔法の応用だと言う。

 革命軍を撹乱する。レグルスが村ではない場所にいると分かれば、革命軍は進路を変えるはずだ。


 しかし、これは危険な賭けだった。

 ウルの変装は謂わば、囮だ。救援の望めない現状では、捨て駒にも等しい。革命軍が進路を変え、ウルが殺される前に、何とかする。ーーその何とかというのが、湊頼みというのも、心許こころもとないけれど。




「……俺は」




 航は水平線を見詰めながら、言った。




「俺は、魔法界の住人じゃない。だから、此処で人が虐殺されようが、王家が滅亡しようが、どうでも良い。でも」




 でも。

 航は意を決して、口を開いた。




「今の革命軍が魔法界を制圧したら、次は人間界が危険に晒される。それは、困るんだ」




 困るんだ。

 家族がいて、葵くんがいる。ゴミみたいな世界でも、価値がある。ーー親父が命懸けで、守った世界だ。


 航は拳を握った。

 父が死の瞬間に何を思ったのかは分からない。どんな大義名分があったとしても、死んだという事実は変わらない。




「俺の優先順位は決まってる。必要なら、ウルのことも見捨てる」




 ウルは笑った。

 非情な言葉を告げた後とは思えない程に、明るい笑みだった。




「馬鹿だなあ。それじゃあ、死なないでくれって言っているように聞こえるよ」




 否定はしない。

 死んでくれとは、言えなかった。航は、上部の言葉の無意味さを知っている。


 ウルは乾いた笑いを零した。




「子供に頼る気も、死ぬ気も無ぇ。いざって時は、自分の身を最優先する。だから、お前もそうしろ。例え、俺がどうなったとしても、それは俺の判断で、お前に責任は無い」

「……」

「自分の命の責任は、自分で取れ」




 耳が痛い。

 航の胸中なんて、ウルにはお見通しなのだろう。


 その時、波の上を滑る革命軍の中から、花火のように鮮やかな火球が放たれた。

 火球は激しい吹雪を物ともせず、村の中心部を直撃した。恐ろしい程の火柱が迸り、村はあっという間に火の海になった。畳み掛けるようにして革命軍が雪崩れ込む。草の根を分けて探すどころか、塵一つ残さない非道な虐殺行為だ。


 黒煙が龍のように立ち昇る。

 村が業火の中で悲鳴を上げる。


 航は、顳顬こめかみに静電気のような微かな痛みを感じた。

 それは、焼夷弾に酷似していた。父の命を奪った非人道兵器が、まるで目の前に蘇ったようだ。


 痛みを呑み込み、航は身構えた。

 目測で距離を測る。村を蹂躙する革命軍の狂気の声が聞こえるようだ。


 魔法陣が発光し、パルチザンが真っ赤に燃え上がる。


 助走、流れるようにステップを踏み、下半身からのエネルギーを一気に放出する。神の恩寵ーー或いは、サラマンダーの加護。しなる腕から放たれた一撃は、砲撃音にも似た爆音と共に空気を切り裂いた。


 エネルギー弾と呼ぶには粗末で、飛び道具と言うには余りに野蛮。それは具現化された巨大な炎の槍だった。今の航の最大出力、文字通り一撃必殺の攻撃。


 空は夕焼けのように染まり、爆音が鳴り響く。

 革命軍の鼻っ柱をぶん殴るような苛烈な奇襲は、その顔を振り向かせるには充分過ぎる威力であった。

 しかし、一撃を放ったと同時に航は雷に打たれたかのような激痛に襲われ、手にした武器と一緒に転がり込んでいた。


 力には代償が付き纏う。

 航のパルチザンには、身体能力を乗算する攻撃特化の魔法が組み込まれている。サラマンダーの加護はそれを倍増する。今の航には、身体能力の上限を超えた攻撃に堪えるだけの土台が無い。


 身体が粉々に砕けたかのような激痛に、航は立ち上がることすら出来なかった。

 勇み足の革命軍は、予期せぬ攻撃によって動揺し、烏合の集と化す。刹那、耳を劈くような高音が響き渡った。


 生理的嫌悪感を呼び起こす音の波だ。革命軍の視線が一気に集まり、一体の怪物となって此方を向く。


 雪原に半分埋もれながら、航は鉛色の空を睨んでいた。村も雪原も、紅蓮の炎に焼かれ、灰と化す。この世ならざる光景に、航の意識はおぼろかすんでいた。











 16.蟻の景色

 ⑹地べたの鳥









 手首から溢れた血液は、どろりとした暗褐色をしていた。

 掌を通過した血液が指先へ伝う。湊は滴り落ちるそれをインクの代わりに、地面へ魔法陣を描いていた。


 エレメント召喚の魔法陣。

 湊は一度、人間界でウンディーネを召喚したことがある。それを応用する。

 円は循環。必要な要素を文字で代用し、数学的な不都合が生じないよう揃える。魔力の供給は昴に頼み、後は発動するだけだった。


 魔法陣が赤く発光する。ーーだが、それは風前の灯のように消失してしまった。


 何故だ。

 公式が間違っているのか。

 それとも、条件を満たしていないのか。


 手首の血は凝固し始めていた。加えて身も凍るような極寒だ。血管は収縮し、魔法陣を描くには足りない。湊は堪らず舌打ちを漏らした。

 人の総血液量は体重の十三分の一。その内の半分も無くなれば心停止に至る。それでも、弟が窮地に晒されている状況で、立ち止まる訳にはいかなかった。


 さっき切ったのは右手の静脈だった。

 次は左手だ。それでも足りないなら動脈、そして、指を一本ずつ切り落とす。


 湊の周囲には、無数の魔法陣が残されていた。どれも発動に至らなかった失敗作だ。


 閉鎖的な空間に血の臭いが満ちて行く。

 微かに聞こえる潮騒が、薄闇の中に糸を張るような緊張感を連れて来る。


 湊はナイフを握った。

 左の手首へ照準を合わせ、振り下ろす。ーーしかし、それは昴によって阻まれた。




「もう、止めろ」

「まだ終わってない」




 力任せに振り払った勢いで、湊は狙い通りの場所を切り付けた。脈に合わせて血液が溢れ出し、指先へ伝う。これで、また抗える。

 火のエレメントが駄目なら、土のエレメントはどうだろう。この北方を統治するのはノームだ。サラマンダーやウンディーネよりは可能性がある。


 湊は痛みを知覚していなかった。

 周囲の人々がどんな顔をしていたのかも見えていない。洞窟に充満する緊張感と恐怖感は、息苦しい程に重く漂っていた。


 徹底抗戦は自分達のモットーだ。こんなところで諦めないし、誰一人死なせるつもりも無い。

 魔法陣は発光しては消えて行く。発動しているのに、召喚出来ないということは、何か条件を満たしていないのだ。


 何だ?

 何が足りない?

 湊は持てる知識を総動員して、未知の魔法陣を描き続ける。それが干し草の山から一本の針を探すような困難であったとしても、湊は手を動かし続けた。


 その時、団子状に固まっていた村人の一人が、喉から血を吐くような声を上げた。限界まで張り詰めた風船が破裂するような、狂気的な悲鳴だった。


 物理的にも精神的にも追い込まれた人間が、狂気に染まるのはあっという間だった。恐怖は伝染し、洞窟内は異様な空気に包まれる。

 頭を抱えた男が叫びながら、弾丸のように駆け抜ける。湊は立ち塞がるようにして両手を広げた。




「其処を退け!」




 狂った男は、湊の肩を掴んだ。

 握り潰さんばかりの強い力に、肩の骨がぎしぎしと軋む。湊は平静を装って言った。




「もうすぐ、王の軍勢が助けに来てくれる」




 嘘だ。

 王家は、この村で起きていることを何一つ知らない。

 けれど、危機的状況に追い込まれた人々を安心させ、大人しくさせるには、そう言うしか無かった。


 その嘘を、湊は何度も繰り返した。

 何度も、何度も何度も、何度も何度も何度も何度も何度も。繰り返し口にすると、それが真実のように錯覚してしまう。湊は、追い込まれた状況で自分の言葉が嘘なのか本当なのか、分からなくなっていた。




「王家が助けて下さる」

「王家が守って下さる」

「王家が救って下さる」




 異口同音に唱えられる言葉に、平衡感覚が奪われるような目眩を覚えた。湊には他人の嘘が分かる。この村人たちは嘘を吐いていない。ーー心の底から、王家を信じているのだ。


 精神干渉でも洗脳でも無い。

 もっと悍ましい何かが、この村人の心の中に棲み着いている。


 その時、洞窟の奥から獣の咆哮が轟いた。

 恐怖と緊張の渦に叩き込まれた村人が、逃げ場を求めてパニックに陥る。湊はその声の主が誰なのか直感した。




「魔獣か?」




 焦ったように、昴が言った。

 人が発する叫び声に聞こえなかったのだ。湊は心の芯が凍り付くような虚しさに包まれて、その場に立ち尽くしていた。


 村人たちが、互いの出方を伺うように目配せする。

 猜疑心が其処此処で芽生え、花開く。人々の昏い表情が、湊の中に一つの結論を導き出す。


 地獄のような血塗れの密室で、自由を奪われていた子供。人としての尊厳を奪われ、家畜のように拘束され、誰一人助けようとはしない。


 疑念と嫌悪が心の中に溢れ、湊は苦く首を振った。




「魔獣じゃない。人間だ」




 湊の言葉に、村人が目を伏せた。

 怯えたように昴は肩を跳ねさせる。何か思うところがあるのかも知れない。いずれにせよ、この場で追及する必要は無い。


 優先すべきは、村人の安全だ。

 例え、この村人が異なる思想を弾圧、排除する過激派の集団であったとしても、人を人とも思わぬ非道な拷問を喜ぶサディストだとしても、今は守るべき弱者だ。


 罪を裁くのは自分ではない。彼等は必ず報いを受ける。しかし、それは今じゃない。


 湊は奥歯を噛み締めて、感情の波が通り抜けるのを待った。今の自分がやるべきことは、エレメントの召喚だ。

 航とウルを残して来たのは、彼等の生存率を上げる為だ。湊が此処で二の足を踏んでいたら、彼等を危険に晒すことになる。


 血で描かれた出来損ないの魔法陣の中、湊は目を閉じて思考を巡らせる。魔法界で培った経験を、人間界の知識と繋ぎ合わせる。

 きっと出来る。今度は届く。


 左手首の静脈から溢れた血液が、荒い岩の表面に薄く魔法陣を描く。澄んだ緑色の魔法陣が発光する。それは闇に染まっていた湊の思考をすくい上げる希望の光に他ならなかった。ーーだが、その時。




「退け!!」




 地を這うような恫喝的な声が頭上から降って来て、その足が血で描いた魔法陣を踏み躙った。湊は悲鳴を上げそうになった。


 男は、激しい運動の後のように荒い呼吸を繰り返していた。その目には鬼火のような青白い炎が宿っている。生前の父を怒らせた時、湊と航はこの目の前に立ち竦んだ。


 それが何なのか、湊には未だに分からない。


 言葉を失った湊を突き飛ばし、男は洞窟の出口へ向かって突進する。後に続けと、男たちが雄叫びを上げて走り出す。




「駄目だ! 止めろ!」




 外には革命軍がいる。

 此処で村人が見す見す死ねば、航とウルの行為が無意味になる。湊が追い掛けようとした時、昴が押し留めた。




「僕が追い掛ける。湊は、もう一度、魔法陣を描いてくれ」

「でも、」

「今度は届くよ。大丈夫。湊は独りじゃないからね」




 そう言って、昴は泣き出しそうに笑った。

 胸が軋むように痛かった。湊は頷いた。


 昴は男たちを追い掛け、闇の中へ走り出した。

 残された湊は、右手の動脈を切った。赤黒い血液が塊となって流れ出す。貧血の為か視界は砂嵐のように霞んでいた。


 さっきは成功したんだ。

 大丈夫。大丈夫。大丈夫。

 航も、昴も、ウルも、この村の人も、誰も死なせない。守ってみせる。


 先程の半分も時間を掛けず、魔法陣は完成した。だが、発動しない。魔力の供給源である昴がいないからだ。


 湊は魔法使いではない。ただの人間の子供だ。

 幾ら魔法陣が描けても、難解な公式を解析出来ても、発動しないのなら落書きも同然だ。

 魔力の供給源としての協力を求め、湊は声を上げた。




「誰か、力を貸してくれ! 魔法陣は完成してるんだ! エレメントを召喚出来るんだ! あんたたちは、魔法使いなんだろ?!」




 湊の声に、頷く者はいなかった。誰もが目を伏せ、背を向ける。

 洞窟の奥から轟いたあの子供の声が人間のものに聞こえなかったように、血塗れの湊もまた、人間には見えなかったのだ。


 湊は訴え続けた。

 弟の窮地、革命軍の進行、暗闇の密室。酸素の薄くなった空間で、湊の脳は理性的に稼働しない。




「誰か助けてくれよ!!」




 湊の声が虚しく木霊するーーその中に、微かな地響きが聞こえた。

 爆発だ。地上で、何かが起きた。航か、革命軍か、それとも。


 酒場の店主が、掌に磨き込まれた鏡のような円盤を創り出す。人間界で言うところのビデオカメラだ。

 其処に映し出されたのは、火の海となった無残な村だった。故郷を蹂躙された村人が絶句する。洞窟内は異様な静けさに包まれる。

 そして、次の瞬間、鈍色の空を真っ赤な槍が貫いた。


 航だ。

 航が約束通り、危険を承知で革命軍を撹乱している。

 背後に見えるのはレグルスだ。だが、湊には、それがウルの変装であるとすぐに分かった。自分が想像する以上に、彼等は決死の覚悟で戦ってくれている。


 洞窟内に浮かぶ彼等の姿は、湊にとって、希望の光だった。ーー村人が、ぽつりと零した。




「王様だ……」

「王家が助けに来て下さった……」




 違う、あれはレグルスじゃない。

 湊は否定の言葉を呑み込んだ。


 人は見たいように見て、聞きたいように聞く。村人の目には、彼等の姿は王家の救援にしか見えていなかった。


 強力な一撃を放った航が、痛みに顔を歪めて倒れ込む。湊は堪らず駆け寄っていた。

 村人はそれまでの沈黙を打ち破るかのように雄叫びを上げた。




「王の力になろう!」

「王家の為なら、この命を落としても構わない!」

「王家の為に!」

「王家の為に!」




 村人が一丸となって、狂ったように叫び続ける。

 獲物を前にした獣のように、彼等の目は好戦的にぎらぎらと輝いていた。


 彼等が何をするつもりなのか、すぐに分かった。


 鏡の向こう、洞窟を脱出した男たちが浮かび上がる。余りにも多勢に無勢だ。戦力になんてなるはずが無い。


 誰か。誰か助けてくれ。

 このままじゃ、みんなが。


 磨き込まれた鏡の向こう、隊列を組んだ村の若い男たちが突き進むのが見えた。革命軍は奇襲によって混乱している。先頭の男の頭上に、緑色の魔法陣が光った。


 エレメント召喚でも、肉体強化でも無い。

 湊の目には、魔法陣に刻まれた残酷な事実が明瞭に映し出されていた。


 それは身体そのものを爆弾に変え、強敵に一矢報いる最悪の攻撃。


 だ。


 後に続けとばかりに、男たちが次々と自爆する。

 臓物が破裂し、血の雨が降る。悪夢のような光景を前に、村人から歓声が上がった。湊には全く理解の及ばない状況だった。


 村人の自爆攻撃なんて毛程も効いていない。

 革命軍の攻撃対象が変わるのが分かった。自爆攻撃を繰り返す村人ーーその拠点となる洞窟が、矛先になる。


 最悪だ。

 これ以上無い程に最悪の事態が起こっている。


 頭がおかしくなりそうだった。冷静にならなければならないと思う反面で、何もかもを諦めて叫び出したくなる。


 誰か、誰か、助けてくれ。


 綿密に積み上げて来たドミノが、何も知らぬ他人の手で崩されるような、堪え難い虚しさが襲い掛かる。

 革命軍が洞窟を目掛けて突進して来る。湊には打てる手が無かった。


 昴もいない。エレメントも呼べない。

 何か、何か無いのか。この絶望を打開する起死回生の策は無いのか。




「王家の為に!」




 湊の横で、若い女があの魔法陣を展開した。

 。湊は殆ど反射的に体当たりして、女を突き飛ばした。魔法陣が掻き消される。けれど、何処かで、また同じ魔法陣が浮かび上がる。




「王家の為に!」




 湊は手を伸ばした。ーーだが、その時、洞窟内は緑色の光に包まれていた。まるで、鬱蒼とした暗い森の奥に迷い込んでしまったみたいだった。

 魔法陣が空間を埋め尽くす。村人は、革命軍諸共、自爆しようとしている。




「王家の為に!」




 恍惚とした声が降って来る。湊には、それが呪いの言葉に聞こえた。

 彼等の言葉も意志も全く理解出来ない。


 こんなところで死ぬのかよ。


 湊は覚悟を決めた。

 例え、回避不能の困難が降り注ぎ、凡ゆる抵抗が無意味になり、絶望の未来が待ち受けていたとしても、絶対に目は閉じないし、逸らさない。


 それは、最後の一瞬まで、死ぬ気なんて、これっぽっちも無いからだ。

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