段ボールです。

朏 天音

第一話 『段ボールです。』

 引っ越し先の新しい部屋の中で、箱を見つけた。

 見ればそうだとわかるのに、ご丁寧に『段ボールです。』なんて張り紙が貼ってある妙な箱だ。

 持ち上げてみたが軽く、振ってみたが音のしないその箱は、ガチガチにガムテープで蓋を塞がれており、汚れているのに形だけは綺麗で、これまた奇妙に思えた。

 何も入っていないのなら、封をする必要なんて無い。やはり何か入っているのかと思い、ガムテープを乱暴に剥がして中を見る。

 しかし期待通りにはいかず、思った通り中には何も入っていない。


「なんだ……ただの箱かぁ」


 乱暴に剥がしたものだから、テープが貼ってあったところは禿げてボロボロに。

 使い物にならないと判断したので、他のゴミと一緒にその箱を捨てた。

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