第8話 心の中に
〜八吹 有 side 〜
音葉は笑顔を見せた
――――だけど
俺に向ける笑顔は何処か切なくて
このまま離れるのには
正直………
俺は寂しさを感じた――――
でも音葉に迷惑を掛けたくなかった
アイツの過去を綿辺から全て聞いたからだ
見た目だけであり
ありもしない話を
男子生徒にされ
好きな人に告白されて
両想いになり
1ヶ月位付き合って
呼び出された矢先
後は音葉から聞いた話が
俺の脳裏に過った
その後の事は綿辺が更に詳しく話してくれた
その時、先生が来て難を免れたらしいが、アイツはしばらく学校を休んだと………
無理もない
そんな事があって学校に行けるはずがない
要約、学校に来てくれたらしいけど音葉を押さえ付けた男子生徒や付き合っていた彼氏と会う毎日
嘘の噂が彼女の心を傷付け
どれだけ締め付けられていただろうか?
アイツは男の子に対して壁をつくり
恋する事を封印したのだろう
アイツが前に雨の日に言った言葉が
今なら分かる気がした
『…恋がしたい…』
そんな想いが本当はあるのに
相手に不信感を抱く
その想いが
強いのだと――――
もし俺がいつものように
アイツにちょっかいを出すと
また彼女は
同じ目に遭わされる
そんな気がした
同じ登下校
同じクラス
馬鹿しあっていた
毎日がなくなる
〜 優月 音葉 side 〜
有に言われた言葉が
凄く悲しくて
辛かった―――――
本当なら
いつものように肩を並べて
一緒に帰れるはずだったのに…………
朝の登校も
何故か有は
私の家に寄って
呼びに来ていた
恋人でもないのに
一緒に通って―――――
でも………
もうそれがなくなってしまう
馬鹿しあっていた登下校も
学校でのクラス内も
あなたとふざけあっていた日々が
嘘みたいに
消えてなくなる―――――
ねえ……
一年に一度しか逢えない
織姫様も彦星様も
離れ離れになった時
寂しい毎日ですか…?
だけど…………
年に1回必ず逢える
でも――――
私達はもう
天の川を
渡れなくて
別々の道を
進む事しか
出来ないですか…?
私……
優月 音葉は
八吹 有という彦星の
織姫になれますか…?
それとも………
なれない……?
〜 八吹 有 side 〜
その後、俺達は一切会話をしなくなった。
そして彼女、宗上 梨砂の事を調べる事にした。
転入生として、ここの学校に来てから仲良くしてくれている男子生徒・土家 右次(つちや ゆうじ)と協力。
彼に俺の親友と顔を合わせ、俺の過去を知った土家は広く浅くの付き合いで男女問わず人気がある為、他校生の友達からの情報が沢山集まってきている状況だ。
彼女、宗上 梨砂はかなりヤバイ事が分かってきている。
「あ"ぁ"〜っ…マジでやべぇ…俺、人間不信になりつつあるんだけど…」
「無理もねーだろ?あの女は、そういう奴なんだよ!」
「…別れ告げるのもおかしいし…友達以上は無理だって言う以外ないよな?」
「八吹君、どう?」
「…綿辺…」
「どうもこうも人間不信寸前」
「…人間不信…」
「土家からの情報で、マジ彼女の人間性疑う」
「俺、友達幅広いから彼女の情報が、あるわ!出るわ!俺も驚いてるし、彼女の人間性疑った」
「俺、もう傷付くのマジで怖いんだけど…」
「そうか…」
「アイツ、大丈夫?」
「アイツ?もしかして…音葉?」
「ああ…」
「うん、今の所は大丈夫だけど…心配はしてる中、何処か寂しそう…」
「そっか…」
俺は音葉を見る。
転入した時は隣の席だったけど、席替えがあり今は離れている。
「俺も…同じ…。正直つまんねーのもある」
「…八吹君…」
「お前…」
「アイツにとっても俺にとっても何処か信頼しあっている部分があって、一緒に馬鹿しあえる唯一の女友達で何処か特別なのかもしんねー…。…何か…一番大切なもの失ったような感じ…?」
毎日がつまらない
肩を並べていた時間
隣で馬鹿しあって
喧嘩していた毎日が
たくさんありすぎて
今、話せない時間が
ここまで辛いとは
思わなかった
気付けばいつもアイツが
私の心の中にいる事に気付いた
私は……
有が……
好き……
話したくて
仕方がないのに
あなたは隣にいない
今年の七夕の願い事は
叶いますか……?
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