七夕の夜に・・・

ハル

第1話 出逢い

7月7日。


七夕の日。



「♪〜笹の葉さ〜らさら〜軒端に揺れる〜…」



私は、自分の二階の部屋のベランダで七夕の曲を唄い出し、ミニ笹の葉を飾る。



「ダッサ!」



ビクッ


家の前の道路から声がし驚く中、下に目線を向けた。

そこには私と、そう変わらない男の子の姿。




「あんたいくつ?」


男の子が尋ねてきた。



「えっ?じゅ、16ですけど……」


「16ぅっ!?…良い歳して七夕ってさぁ〜どうかと思うけど?」


「年に一回、織姫と彦星が逢える今日を共に喜んで祝うのに何処が悪いんですか!?」


「はぁっ!?祝う…ねぇ〜…」


「そういうあなたこそ彼女の一人くらい連れて歩いたらどうなんですか?」


「なっ…!」







織姫様と彦星様


奇跡が起きるかもしれない今日


あなたは


どんな願い事を書きますか?




「茶化したり馬鹿にするくらいなら帰って下さい!」


「お前の性格じゃ一生かけても叶うのも叶わねーな」


「そんなの分からないじゃないですか!?第一、初対面のあなたに、とよかく言われたくありませんっ!あなたこそ、男女のイベントとかケチつけて文句言うなんて罰が当たりますよ!」


「バーカ。だったら世の中の人間が罰当たりまくりだっつーの!」


「あなたが代表で罰当たれば良いっ!さようならっ!」




私は自分の部屋に入る。



「………………」


「代表って…面白い事を言う奴だな…」




男の子は帰って行く。



私、優月 音葉(ゆうげつ おとは)。

16歳。高校2年生




ひょんな事から彼に出逢ってしまった。


それが良い出逢いなのかは定かじゃないけど


きっとこれが何かの縁なら


私に幸せは訪れますか?





―――次の日


私のクラスメイトに一人の転入生が来た。


興味のない私は気にも止めず、窓の外をボンヤリと眺めている。




「八吹 有(やぶき ゆう)で〜す。宜しくお願いします!」


「ねぇねぇ、超イケメンだよ」



親友の、綿辺 砂夜香(わたべ さやか)が、小声で私にコソコソと話し掛けてきた。



「イケメンに限って性格悪いに決まってるよ」

「相変わらずだなぁ〜。音葉は」


「それじゃ、八吹の席は、優月の隣だ」

「はい」

「優月、色々と教えてやれよ」

「はい」



前を見て返事を一応するも、私の視界には転入生なんて入っていない。


すぐに窓の外を眺める。



「宜しく!えっと優月さん?」

「宜しく」



見向きもせず私は返事だけした。




「なあなあ、挨拶は礼儀じゃん。人の目を見て話そうぜ」


「面倒い。別に良いでしょう?シカトされるよ・り・も」


「…はいはい…分かりましたよ。女の子なのに第一印象良くねぇぞ!」


「別に。第一印象良いよりも良くない方が印象残って良いんじゃない?」



「………………」



「…それは…どうかと思うけど…」

「あっそ!」





―――放課後



「…あ〜…疲れたぁ〜…」

「転入初日は色々と大変だからね」



「「あっ!」」



二人同時の声。



「昨日の女…」

「偶然にも程が…」


「性格悪けりゃ…七夕飾りもするよなぁ〜…寂しい奴」


「い、良いでしょっ!?」


「なあ、願い事って何?どうせ “良い男現れますように“ とか “カッコイイ彼氏が出来ますように” とか、そんな感じのありきたりなやつだろう?」



「違いますっ!」


「へぇ〜…図星なんだな」


「違うって言ってるでしょ!?」


「…ふ〜ん…つーかさ、そういう願い事よりも、“自分の性格を直して下さい” の方が良くね?」


「そういうあんたこそ性格直した方が良いんじゃない?あんたの体全身を短冊状にしてあんた事、笹の葉に吊るしてやるっ!」


「俺を短冊状ねぇ〜…だったらしてみろよ!」



制服を脱ぎ始める。



「バ、馬鹿っ!女の子の前で脱ぐなっ!」



私は両手で顔を隠すように覆う。




グイッと両手を掴まれ体がビクッとなる中、目の前には彼の顔。




ドキッ

胸が大きく跳ねる。



ドキドキ加速する中



「バーカ。好きでもねぇ女の前で脱ぐ訳ねーだろ?ばっかじゃねーの?マジにとんなよ!バーカ」



ムカッ


馬鹿の連発。

マジ腹立つ。



スッと離れる転入生。



「さて帰ろう!メルヘン女と一緒にいるとメルヘン馬鹿が伝染る!」


「メ、メルヘン女って…うるさいなっ!メルヘン馬鹿とかマジ笹の葉にあんた事吊るしてやりたいっ!マジ吊るされちゃえ!」




グイッと肩を抱き寄せる。


ドキッ



「自らの手でどうぞ。七夕馬鹿の織姫さん」



そう言うと、抱き寄せた肩を離し帰り始める。



「もうっ!何なの!?マジ腹立つんだけど!」




私達は騒ぎながらも校舎を出る。


そのままの流れで肩を並べて帰る私達。





その途中―――




「あれ?音葉じゃん!久しぶり〜」



他校生の男子生徒が声を掛けてきた。




「………………」



「へぇ〜、お前高校に入っても男切れねぇんだな。飽きねーな?もう何人目?」



「………………」



「優月?」


「数え切れない人数って事なのかな〜?音葉」



「………………」



私は去り始める。



「優月?おいっ!」


「あんたも彼女が可愛いからって傷付く前に別れた方が良いよ。もし付き合ってないとかなら好きになる前に気を付けといた方が良いよ〜。それじゃ」



「………………」




「優月っ!」



グイッと腕を掴まれる。




「なぁ、さっきの話どういう…お前…男遊び激しいの?」



「………………」



「何か言えよ…まさか図星なわけ?」


「…そ、そうなんだ〜。だから七夕なんてしてるメルヘン馬鹿女なの。笑っちゃうでしょう?だから深入りしない方が良いよ!じゃあね!」



私は掴まれた腕を振り解き走り去る。




「………………」



 


―――嘘ついた



私はそんな女の子じゃない………



だけど………



本当の事は話せなかった………



男なんて……




















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る