第9話 話し込む
お茶とお菓子を頂きながら、話が始まった。
「セイランから、ある程度は聞いているかしら?」
頷くと詳細を教えてくれた。
「まず私の事からね。私は貴女方人族が精霊と呼ぶ存在。その中でも上位の精霊なのよ。貴女は、創世の物語を知っているかしら?そこに出てくる、原初の4人の精霊のうちの1人が私。風を司る精霊王と言われているわね。セイランは、私に使える精霊の1人で側近と言えるものよ。ちゃんと役に立ったでしょう?ふふふ」
えっと……また情報過多になる……とりあえず、聞きましょう。美人に口を挟めない・・・
シルビア様の言葉に、少し頬を膨らませた感じでセイランが目を向ける。
拗ねてる?美人に睨まれたら私なら心が折れる。サラッと受け流せるシルビア様は流石、精霊王だと思う。
「セイランが貴女をみつけるすこしまえにね、魔族の動きが随分活発になって、精霊たちも騒いでいたの。そしたら、魔物たちが大移動をするじゃない。びっくりしたわ。本来魔物は、集団行動なんて滅多にしないんだもの。それで、何を目的にしているのかを見に行ってもらったのよ。」
少し下を向いて茶器を見つめていたシルビア様の、にっこりと素敵な笑顔がこちらを向く。その会心の笑顔に、心臓が早鐘の様に飛び跳ねてしまう。
先ず、原初の精霊は神話です。小さな精霊にも簡単には会えません。特別な力を持った方が、何人もで儀式を行いやっと会えるのです。ご自分の眷属を取りまとめるどえらい存在に簡単に超ド級の美人さんとか思ってごめんなさい。セイラン様も、呼び捨てにしててごめんなさい。王の側近ってとっても凄い存在なのに。あぁ・・・話し相手をしてくれたらいいのにとか、愚痴も考えたわ・・・私。風の精霊王とか、マルレイ国建国にも関わる重要な存在なのに。確か、初代国王様が永住地を探しているときに、この場所は北を断崖絶壁にしているから守りやすいと助言してくれて、その地に祝福を下さったとか何とか・・・。あぁ、私不敬罪で投獄されそう。
しかも、本来魔物は集団行動をしないならば、あの数はどこにいたのでしょうか?召喚とかしようものなら、50回分の人生をつぎ込まないといけないような数でしたが・・・?
脳内の混乱を一先ず棚上げしてシルビア様に質問する。
「お伺いしてもよろしいですか?」
なぁに?と首をかしげて微笑まれた。お美しいです。
「結局、魔物たちの目的については、お分かりになったのですか?」
「それがねぇ・・・わからないのよ。各地で数が増えている報告はたくさんあるの。でも、地域に統一感がないし、災害を引き起こすほどでもなかったのよ。それが突然あの数でしょう?各地の数を足したら、軽く100万ほどよ?まだ氷山の一角なのか上位種の魔族・魔獣・魔霊を姿を見せてない。魔王級も鳴りを潜めているし。さっぱりわからないわ。」
あっけらかんとわかないと微笑まれた。いや上位種て何?魔王級?そんなものまでいるのですか・・・頭が爆発しそう・・・痛い・・・
深く考えちゃいけない気がする。いや、考えないと帰れないんじゃ?
脳が限界だったのか、事切れた様に視界が暗転した。
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「あ、起きた?」
既視感の様な・・・
「私、倒れた?シルビア様に失礼なことを・・・ごめんなさい。」
「いや、僕に言ってもね。それに、別に何も怒ったりしてないよ。逆に付き合わせちゃったから倒れちゃった!って、心配してた。もお、大丈夫?」
セイランは、身振りでシルビアの様の真似をするから、少し笑ってしまった。
精霊王を心配させた人間は、この世に私くらいだろうな・・・申し訳ない。
「あ・・・あの・・・セイランのこと呼び捨てにしちゃってて、ごめん。また、連れてきてくれたんだよね。ありがとうございます。」
「・・・あぁ、それは構わないよ。これからも呼び捨てでいい。今更変わっても笑えるだけだし。でも、倒れないように体力はちゃんと付けなきゃね。」
何に対しての沈黙だったのか、少し驚いて考えてから、呼び捨てにする許可をくれた。
「少し、運動する時間を作ろうか。」
「あ、あの・・私はどれくらいここにいるのかな?時間の経過とか感覚とかわからなくて・・・ごめん。」
私のことを考えてくれているのを遮ってしまった気がして、尻すぼみに謝ってしまった。「時間・・・そうか人間の体には体内時間とかそんなのがあったんだっけ。健康や成長にも関わるとかだったね。・・・いいよ、朝昼晩が分かるように窓を作るから。あと、君は体感から何日もいる気分だろうけど、ここに人間みたいな時間の概念は無いんだよね。まぁ、敢えて言うなら、人間の住まう世界でなら君が来てからは4日ほどになるはずだよ。因みにここは、隠された聖域。精霊界とか君たちに言われてるやつね。別の空間とかそんな感じかな?まあ、考えても理屈とかは意味が無いからやめておきなよね。」
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