飛行機と公衆電話

 カーテンでも抑えきれないくらい、まぶしい朝日が部屋に差し込む。これだけ天気がいいと散歩でもしたくなる。


 白いトレーナーと黒いスキニーパンツ。キャップを被ってお気に入りのスニーカーを履く。


 左のポケットには家の鍵。右のポケットには五百円玉。


 それ以外は何も持たずに外に出る。深呼吸して、空を見上げる。


 飛行機が近くを飛んでいる。ジェット音が気持ちいい空に響き渡る。なんとなく、それを追いかけて歩くことにした。


 たどり着いたのは空港の見える公園だった。のどが渇いたので自販機でジュースを買う。ベンチに座ってあたりを見渡す。ここには、一度来たことがある――。


 小さな頃、迷子になって彷徨さまよった。夕暮れ時。飛行機が発する不気味な音が響く中、この公園にたどり着いて公衆電話を見つけた。


 ポケットに入れていた十円玉で、なんとか家に電話して、家族に迎えに来てもらった事を思い出す。


 ――あの時の、頼れる公衆電話は、もう見当たらない。

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