私を地下室に連れて行って

沼田くん

第1話

 私は、再び彼の家を訪ねた。私の心は一つのことを思って浮わついている。

 来た❗

 みしみしと音がして私の居る部屋に近づいてくるのが聴こえる。だんだんと、その音が大きくなって、いきなり襖が開いた。目にしたのは彼。彼の手に縄の束が握られている。

(縄だ)

 浮わついた私の気持ちを悟られたくなくて神妙な顔をして彼を見つめる。

「なぜ来た。あれ一度きりだと言ったはずだ」

 怒った顔。戸惑いが見える。私は何も口にしない。じっと、彼が握る縄を見つめ続ける。

 じゃあ、なぜ、私を部屋にあげたの?手に握っている縄はどういうこと?

 私は、彼に目で問いかける。

「括って。括りたいんでしょ?私を」

 口にした。目の前の彼が、ごくりとのどを鳴らした。

 私は、黙って背中を向けた。腕を自ら背中に回して背の中ほどで重ね、組む。と、彼の息が首筋にかかった。荒い息を感じる。もう一度、私は口にする。動けないように括って。

 更に荒い、生暖かい息を肌に感じた。括られる!私は確信した。

 と、縄が畳を打つ音、手首に絡んできた。すぐに手が背中で動かなくなった。縄は、速かった。胸を締め付け、苦しい。更に体が不自由に、動けなくなった。そんな私に二本目の縄が足され、胸を挟む縄に乳房が前に突き出た。息が出来ないほどに締め上げられて、私は泣きそうになった。

 彼は興奮しきりで、縄の加減を誤ったようだ。

「苦しいよ、ゆるめて」

 抗議したが受け入れられなかった。彼は、私を畳に倒すと弄んだ。指が、手が、私の肌に触れ、掴んだ。ブラウスの上から、短いスカートを捲りあげていじくり回した。

 さんざんいじられたあと、私は口にした。

「ちょうだい」

 私は、彼と一つになった。

 彼は、事の後、縄を解こうとした。

「待って」

私は、それを止めた。私は言った。

「私をくくったまま、この家の地下室に連れて行って」

 地下室には、鍵のかかる部屋があった。私は一度、その部屋に入ってみたかった。

 彼は、望みを叶えてくれた。

 地下室はどんより暗く、寒かった。部屋には、すぐに行き着いた。狭く感じる部屋、三畳ほどの広さだろうか。

「入ってみる?入りたかったんだろう?」

 彼は、鉄格子の扉を外側に開けた。私は怯え、膝が震えた。入ってみたいのに体が動かない。入らないなら戻ろう、彼が言うのを聞いて、私は拒んだ。拒み、唾を飲み込み、そして足を踏み出した。中に入ると、背中で音がした。振り向くと、扉が閉められていた。私は、慌てて扉にとりついた。手が出ない。ただ見つめるしかなかった。すると、鍵が見え、扉にかけられた。

「鍵をかけたから、もう出られないよ」

 彼が言うのだ。そればかりではない。私に背中を向けて離れて行く。

「待って!」

 彼を止めようと、大きな声になった。聞き入れられることなく、彼は行ってしまった。

 一人にされた私。いつ戻って来て出してもらえるのか。不安にかられて過ごした。でも、それだけではなかった。

 いつしか不安が薄れて、置かれている状況に興奮してくる自分に気づいた。赤レンガの壁、鉄格子、扉に施錠された鍵。見つめるゆとりが生まれて、熱くなる体を感じたのだった。

 私が望んだ部屋。あそこまで熱く火照った。

 私は、体が熱く汗が吹き出し、ついには、あそこが濡れそぼった。






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