第4話 血塗られた文通

 封印寺に今日は呪殺夫人がいない。お菊さんとお岩さんは二人で心霊スポットの用心棒に出かけていた。


 心霊スポットでお菊さんの怒鳴り声が響く。

「おい! テメェうちの可愛いシャブ中死のぺぺが世話になったなぁ!」

 お菊さんは浮遊霊の男二人を散々殴った後で二人に土下座させている。


 シャブ中死のペペはよだれを垂らしながら「あはぁ、お菊さんんん、ありがっとぉ」とお礼を言った。


 すぐ近くでは、お岩さんがゴリラの幽霊を締め上げていた。

「おう! ゴリ公! これに懲りたら二度とペペに手ぇ出すんじゃねぇぞ。分かったか!」

 ゴリラは半泣きで「ウホウホ!」と謝った。


 シャブ中死のペペは二人にお礼を言った。呪殺夫人は意気揚々と封印寺へ帰って行った。


 ――封印寺では、呪殺夫人がいないのをいいことに幽霊達が夜の墓場で大遊びをしていた。


 一つ目小僧が唐傘に「お菊さんがいないとこんなに楽しいとはね!」と喜々として言う。唐傘は笑顔でカランコロンと同意した。


 それを見ていた呪殺夫人は、特にお菊さんは激怒した。

「おう! 一つ目! 唐傘! テメェらいい度胸してんじゃねぇか! 幽霊が度胸試ししてんじゃねぇぞ!」

 一つ目と唐傘は恐怖で全身が凍りついた。一つ目が言い訳しても、最早遅かった。


 その時、溶けこっこが呪殺婦人の方へ歩いて来た。そして、何があったのか一部始終暴露した。

「お菊さんがいないと、カランコロン。全部覚えている、全部。さて、ドロドロに溶けるか」

 お菊さんは一つ目と唐傘に墓石を持たせて石畳の上に立たせた。


 その時、ぬえが空から手紙を届けた。お菊さんは手紙を受け取ると、平門将からであった。


「お岩さん! 門将様からお手紙よ!」

「おう! 何て書いてあんだ?」

 お菊さんは手紙を読んだ。

「今日、柳の木が満開なんですって……。満開?」

 お岩さんは黙って笑顔で頷いた。


 お菊さんは手紙を読み終えるとすぐに門将へ手紙を書いた。そしてそれを唐傘に届けに行くように命令した。唐傘は負い目もあって、一人寂しくカランコロンしているとお菊さんが唐傘を蹴った。

「テメェ何がカランコロンだぁ! 黙って行きやがれ! 雨の日しか使われない器物の癖に!」

 唐傘はお岩さんを見るが今回は助けてくれない。唐傘はもっと真面目に留守番すれば良かったと反省した。


 それから、何度も何度もお菊さんと門将は手紙を交換した。香典袋に書いた血文字も楽しそうであった。その間、お菊さんの周りの火の玉は黄色と桃色であった。唐傘もその間は何もされなかった。


 ――手紙のやりとりも何度目であったか……。今日もお菊さんに門将からの手紙が届いた。


 お菊さんはお岩さんの所へ走って行った。途中、一つ目が邪魔だったのでグーで殴り飛ばした。

「お岩さん! お岩さん! とうとう門将様が私にお会いしたいって書いてきたよ!」

「本当か! お菊! こりゃあめでてぇ! 今日は仏滅だぜ!」


 お菊さんは狂喜し唐傘の上にのしかかった。

「四枚、五枚、六枚、やったぜぇー!」

「さあ、準備だお菊」

「え? 何を?」

「お見合いだよ!」

「お! お見合い!」


 その時、封印寺の和尚が出てきて「この悪霊どもめ! いつもいつも昼間にでやがって! 悪霊退散!」と言って塩を撒いた。

 幽霊達は消えて行った……。


 次回、新章開始

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る