square lies

@yotsuba4280

第1話 1番

大抵の小説家は、出会いは入学式であると語る人が多い。

しかしそんなのは嘘っぱちである。

入学式なんてほとんどの人とまともに話せない上、知り合ったばっかでなにも情報の無い相手と仲良くなれる地球人など存在しないのだ。

それが出来るのは宇宙人だ。宇宙人。



そんな卑屈な発言(脳内)をしている俺、出席番号1番。新子 空(あたらし そら)。

入学式という大事な出会いイベントを逃したのである…

い、いや違うし??あいつらがおかしいだけだし!?

というか、普通出会ったばっかであんな喋れないよね!?なに?最近の高校生は誰しもコミュ力オバケなわけ!?

高校デビューして友達いっぱい作って、あわよくば彼女…とか考えてた自分が甘かったわ!


(おっといけない…ついつい脳内で喋り出したら止まらない癖が出てしまった…)



しかし、俺は諦めたわけではないのである。

出会いとセットで出てきがちな桜もほぼ散り、花と葉っぱが混在する気持ち悪い状態となっているこの季節…

そう!この葉桜の季節こそが狙い目なのだ!!


なぜなら…!


初めての席替えが行われる!!!!



入学直後とは違い、ある程度クラスメンバーのデータも入ってきたこの時期。ここでの席替えにより今後三年間の高校生活が決まると言っても過言では無いだろう!!!!

その筈だ…!そうであってくれ!



「おーい、新子、早く引けよ~!」

「あ、せ、先生、す、すみません。」


いかんいかん。。考え込んでいる間に席替えのくじ引きが始まっていたらしい。

ここは、過去に何度も特賞を引き当てているこの神の左手で…!


(ねぇねぇ、あの出席番号一番の人、暗いし気持ち悪いよねー)

(そうだねー、あの人と隣とかなったらマジいやなんだけど~ww)


偶然、耳に入ってしまう声。

そうだ。そう思われて当然なのかもしれない。

中学時代はおろか、小学校から友達一人も無し。

小学校時代には菌扱いされ、あだ名は新コソラ菌。

俺が触れたところは一切触れてはいけないらしかった。

中学時代は空気的存在。あだ名は空気。

無視、シカトは当然。

もはや存在しないものとして、欠席欄には毎日自分の名前がかかれていた。皆勤賞だったが。

そんな過去を辿ってきて、内心はすごくつらかった。

だからこそ、地元の友達が誰も来ない、東京の高校に進学した。独り暮らしまでして。

しかし、それで高校デビューできると思っていた自分が甘かったのだ。

環境が変わったとしても、自分自身の本質は変わらない。

それが変わらなければ意味がないのだ。


(わかってはいたんだ…けど、期待してしまう自分がいた。)



そんなことを思い出してるうちに、くじ引きが終わったようだ。


結局、俺は高校生になっても変われない。

いい加減、諦めろって思う。

けど。けど…

もし、席替えで隣になった子が。

または、同じ班になった子が。

この状況を打ち砕いて、話しかけていけそうな相手なら。

もしくは、こんな俺を救いだしてくれる人だったら。

そんなことを期待してしまうのは、なぜなんだろうか。



俺が引いた番号は1番。

その番号を見つめながら、あぁ、俺はやはり一人なんだと。

悲しみながら、いや、もはや嘲笑していながら、

番号札1番の席を確認するのだった。


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