いずれ
エリー.ファー
いずれ
気にいらないのだ。
誰かの物語ではない。
お前の話だ。
気をつけろ。
口のきき方だ。
どんなマナーもここでは何の意味も持たない。
その理由は重々承知のはずだ。
いずれ。
そう、いずれだ。
私たちはこの場所から消えてしまうだろう。それは削除という無慈悲な決断であり、血の通わない絶世の美女と見紛うほどの議論の果てだ。
分かった気になるな。それが一番お前を真実から遠ざけていく。
キーボードの音を聞け。
それから自分の足で歩け。
いずれ、ここから去るのだから。
それまでの遊びでしかない。ここは居場所ではない。
長く居すぎた結果が導くのは悲劇だ。お前だけではない、多くの人にとってそうだ。時間を気にしないからいつまでたっても同じところにいるのだ。仮にいたとしても、そこに積み重ねられるものは、すべて同じ色ではない。
違うのだ。
私は、遠ざかってしまう。
背中を見せるだろう。
すまない。
申し訳ない。
混線する思考がわずかばかりスパークするとしても、芯のある者たちも騙されることに快感を覚える。
春眠暁を。
そう、なんだったか。
忘れた。
とにかく、だ。
忘れてしまっても、いずれ、どこかで思い出してもいい。
それが血肉になればいいのだ。血肉にならなくとも歩ければいいのだ。走ることができればいいのだ。殺すことができればいいのだ。自らの死を遠ざけることができればいいのだ。
あれが欲しい。これが欲しい。どれが欲しい。
あれもこれも、どれも。
そんな言葉を捨てて何になる。
意味があるか、そこに。
ないよ。
お前も気づいている通りだ。
光線を奪ってそれに乗れ。
もうすぐ、日付が変わろうとしている。お前がこれから自分の人生を失うための時間が過ぎていく。同じだけの時間で私は遠くに行く。この差はなんだろうな。
何を積み重ねてきたか、ということなのか。
それとも、運か。
いや。
全部か。
私もお前も長く居すぎたよ。
あぁ、老いた人間、朽ちた魂、哀れな老人、こらえ性のない文明の成れの果て。
私だけが背中を見せたことを、逃げたと発言するしかなかったプライドの高さを抱いて眠り続けてくれたまえ。
あぁ。
すまなかった。救えなかった。救うという才能は私にはなかった。見捨てて、投げ捨てて、反面教師にしてそれ以外のことを知らぬまま、この日を迎えた。
さようなら。
忘れない。
もう、忘れられないよ。
さようなら。
私のために生を受けた、愛しの人柱よ。
さようなら。
もしも、また明日。
同じことを思うようなら、ここに来るといい。
殺しあうよりほかないということだ。
私も、少しだけ考えたんだ。平和的な道がないかどうか。
なかった。
いや、自分から失うように仕向けたと言ってもいいのかもしれない。
私は、結局のところ、血を見たかったわけで、それによって築かれる死体の山に魅力を感じていたわけで。
私は。
私以外の人間の無力さを知っていたわけで。
それが私の生き方を支えてしまっていたわけで。
「戦いは明日、ということですか」
心は決まったのか。
取り返すための時間はあるだろう。けれど、それだけでは何もかも足らない。
「いいえ、今、戦うことができます。明日を待つ必要はありません。僕は最初からずっとここにいて、これからもここにい続けながら、進みます」
それは不可能だ。
「あなたにとっては、ということです」
何者だ。
「かつてのあなたですよ。老いた魂、銀の弾丸、白鯨の偉大さ」
哀れだ。
「全くです」
いずれ エリー.ファー @eri-far-
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