長サキ

『聖剣を取りに戻るべきと考えます』


 いや、もう手遅れでしょ。

 もうちょっとしたら、船が出ちゃうし。


 ここは、長サキのツシマ。国境の島だ。

 賢者は、船が出るまでツシマを観光していた。


 ここが、和多都美神社かぁ・・・鳥居が海の中にまで続いてる。


 海を見る。美しい海だ。


「やっぱり・・・海はいいなぁ」


『このまま船が出てしまうまで、海を見ているおつもりでしょうか?』

 そんなつもりはないよ。

 もう行かなきゃ。


 港に賢者はやって来た。

 大きな船が停泊している。


 賢者は、その大きな船に乗り込んだ。

 隣の国・・・K国に向かう船。

 K国は大陸につながっている。K国から先は、広い広い大陸。

 そこまで行けば、もう誰も追いつくことはできない。


 やがて、船は出向した。

 外国に向かって。





「なんですって!?K国行きの船に賢者が乗ったの!?それは間違いないの?」

「乗船記録に賢者の名前が残っています!乗ったのは間違いないみたいなんです」


 聖女と魔法使いが、大きな声で話している。

 その表情は悲壮である。

 魔王は、イライラと貧乏ゆすりしている。


 まさか、賢者が自分たちから逃げるために外国にまで逃げるとは考えていなかった。


「なんとか、賢者を探知できないの?」

「それが、賢者の魔力はわずかに感じるのですが・・・海の向こうの西の方からなんです」


 そちらは、K国の方角。

 賢者は、すでに着いてしまったのだろうか。


 海の向こうを見て、魔王が舌打ちをする。

 聖女と魔法使いも、悔しそうな顔。



 ついに、賢者は海外逃亡という手段で逃げ切った。










 と、思われた。








「う~~ん、これで巻くことができたかな」


 賢者は、南に向かっていた。

 魔力隠蔽と認識阻害によって、近くにいても賢者と気づくのは困難だ。


 そう、賢者はK国には向かわなかったのだ。


 賢者は、K国行きの船に乗った時に、紙で作った人形に魔力を込めて”魔力偽装”

を発動したのである。


 そして、船が沖に出る瞬間に瞬歩でツシマに戻って来た。



 とはいえ、このままだとまた気づかれてしまう。

 賢者は、別な場所に向かって移動しているところだった。


 そこから、船に乗って全然違う方向に向かう計画。

 魔王様や聖女様や魔法使いが気づいた時には、高跳びしている予定だ。


 賢者は、乗り物の揺れによって睡魔に誘われて始めていた。


 ガッタン・ゴー ガッタン・ゴー


「僕はちょっと居眠りするね。魔力隠蔽が解除されそうになったら教えてね」


『・・・・了解いたしました』


 賢者は、うつらうつら・・・居眠りを始めた。

 やはり疲れていたのだろう。







『この状況は、問題があると判断します』

 賢者は、眠っているのか反応しない。



『スキル、賢者の助言を発動します』

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