第十二話 フォレスト・ホープ・ガイドブック 8
「そっか、ルカの家族が心配してこうなったのか」
「うん、レナエルちゃんも僕が巻き込んじゃったんだよ」
なんだかんだで、落ち着きを取り戻したアダン君に僕は冒険者通りから少し出たところに移動して今回の事を説明する。
レナエルちゃんはスカーレットの皆さんが近くにいて保護してくれている。
ちらりとだけ横目で見た様子では、少し年上だけど女性同士だからか、楽しそうに話していた。
「それでゲインさんは何ともなかったよね」
「体はな、ちょっと昨日家に行ったんだけどよ。めっちゃ落ち込んでた。ルカとエドさんに合わせる顔がないって言ってたんだ」
ちょっと昨日じゃなくて、毎日帰ってるのはゲインさんがバラしたから知っているけど、今はそこを突っ込む雰囲気じゃない。
ゲインさんが落ち込む必要なんて何も無いのに、ぶっちゃけ僕が偶然気づいて偶然魔術が使えて偶然助けられたのに、最後の魔獣がぶつかったのも偶然身を捩ったせいだけなのに、あれ? 偶然多いな。
魔術のことは、家に帰って全属性分の口にするだけで発動出来る魔術を試してみたけど、やっぱりうんともすんとも言わず発動しなかった。
「僕も父さんも気にしていないよ。ゲインさんが無事で良かったとしか思ってないから」
「多分親父もそれは分かってんだろうけど、それでも自分が許せねぇんだろうな」
「うーん……そうだ! だったらみんなでパーッっとやる? 明日中、僕はアリーチェを楽しませないといけないし、そのついでっていうのはアレだけど僕の家の庭で、でっかいお肉でも焼いてお酒もみんなで楽しく飲んだら、嫌な気分なんて全部吹き飛ばせるんじゃない? それでゲインさんに食材とお酒奮発して持ってきてもらえば、ゲインさんも気も紛れるんじゃないかな? アリーチェもお祭り騒ぎは楽しいだろうし」
「お前……おっさんみたいな発想だな」
「せっかく考えたのにひどいや」
「わりぃわりぃ冗談だ冗談、いい考えだな。でもいいのか? それに今日明日で用意できるのか? 準備とか色々あるだろ?」
いきなりでも、食材以外は無くてもなんとでもなるかな? 焼台とかも僕が生活魔法で創れる。鉄板じゃなく石焼きになるけど大丈夫だろう。
炭もあるし、もしなくても生活魔法で代用できる。テーブル、椅子も食器も足りなくても全部創ることが出来る。うん、食材さえあれば僕の家じゃなくても、少し広い場所さえあればどこでもバーベキューが出来るな。あ、どこで出来てもバーキューの後のゴミはちゃんと持ち帰りましょう。
「考えてみたけど大丈夫だよ。一番心配なのはみんなの時間があるかどうかだね」
「そっか、親父のために色々悪いな。親父だけは何があっても連れてくるから頼んでもいいか?」
「うん、もちろんだよ。あ、でも交換条件があるよ」
「おう。何でも言ってくれ」
「明日、アリーチェと遊んであげてね」
アダン君は一瞬ぽかんとしたけど、僕の肩に手を回して「任せとけ!」と笑っていた。
「話は終わった?」
「うん、終わったよレナエルちゃん。それでね明日、アダン君一家を呼んで庭でお肉でも焼いてパーッとやろうって話になったんだけど、やっても大丈夫だよね」
「明日? 多分、ルカが進んですることなら反対はされないと思うわよ。でもなんで急に? それにアダンの家族?」
「あ、えーと……」
そういや、昨日のことはレナエルちゃんには詳しく話してなかった。終わった話で無駄な心配を掛けないためにも、黙っておこうってことになったんだった。
ちょっと困って目が泳いで、アダンくんを見ると任せろとばかりにうなずいてくれた。
「親父のやつがちょっとへましちゃってへこんじゃってさ。明日ルカがアリーチェ楽しませるために、庭で何かやるっていうからさ、親父を元気づけるため俺達も混ぜてもらおうかなって、俺が無理矢理頼んだ」
「へーって、アダンがご飯食べたいからじゃないでしょうね」
「へへっ、それもあるぜ」
「やっぱりね」
呆れたような声を出すレナエルちゃん、どうやらうまく誤魔化せたようだった。アダン君はレナエルちゃんに見えないように僕にサムズ・アップしてきたので僕も返した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます