第一部 エピローグ
あれから、何事もなく。時間が過ぎていった。
おじいちゃんは僕の中から契約魔法が消えて影響がなくなったと分かったら、すぐに父さんの契約も満了させた、僕が取り込んだ契約魔法がなんとかなるまで、あえて満了させていなかったと、聞いた時は僕は、父さんに守られていたんだなと思った。
もうこの村にいる必要もないと、おじいちゃんに言われた。
それに、僕とアリーチェをこの村においておくわけにいかない、ということも言われた。
この村というか、おじいちゃんが手元に置いとかないと、他の貴族にバレれるとどんな手を使っても奪われると言っていた。
その時、おじいちゃんが自分の本当の身分も教えてくれた。
辺境伯の使いではなく、辺境伯そのものだ、ということだ。
僕は驚いたけど、アリーチェは理解できなかったみたいで、キョトンとしていた。
まあ、当たり前か。
仮の名前と仮の身分でいるのは、自分のためでなく他の者を守るためだと教えてくれた。もし、辺境伯として出かけて、その時何もわからない子供とかが、失礼な態度をとったりする。そうなるとその子の親ごと、罰を与えなければいけなくなるからだということらしい。
仮の身分だと、自ら隠していたことなので、言い訳が立つという。
おばあちゃんもおばあちゃんではなくて、さらにおじいちゃんとも夫婦ではなくて、父さんの母親の母親、つまり、僕からはひいおばあちゃんでひいおじいちゃんは亡くなっていて、二人目の旦那さんがトシュテンさんで、ロジェさんのお母さんで、シスターのお姉さんだった。つまりはレナエルちゃんは僕とアリーチェのおばさんで父さんのいとこ。なんてごちゃごちゃでわかりにくいんだろう。
長寿でいつまでも若いと、こういうめんどくさい血の繋がりになるのか。
アリアちゃんは、僕を助けてくれたお礼ということで、おじいちゃんから魔力結晶を受け取って、飛び跳ねて喜び、ものすごい勢いで語り始めて、おじいちゃんの眼を白黒させていた。
アリアちゃんの話に半日つきあわされた後、おじいちゃんとアリアちゃんは、何か話し込んでいたけれど、この時話していたことは後々に分かることになった。
そして何事も起こらず二年が経ち、僕は十二歳に、アリーチェは四歳になった時、僕達一家はこの村を離れることになる。
おじいちゃんの保護下に行く事になったからだ。
おじいちゃんが用意した馬車に揺られ、都会に行くのだろうと初めて村以外を視る風景と供に心が弾んでいた。
数日の馬車の旅の後、目的地に到着する。
僕は周りをゆっくりと見渡した。
木、木、木すなわち森! そして全く整備されていない大地! そこにでっかく立つ校舎! その前で待つアリアちゃん!
そう、僕は辺境の農村から、辺境の学校に来た!
第二部 〈辺境の学校で僕は魔法で遊ぶ〉へ続く
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