第三十話 自分と家族と他人

「ルカ、そろそろ行くぞ」


 朝ご飯を食べて父さんが開拓地へ、出発の合図をしてきた。


「うん、僕も準備は出来てるよ」


 準備と言っても、持つものは布と鍬くらいしかないけどね、あ、最近はちゃんと母さんが作った昼ごはんも、持っていってる。


 生活魔法使えると、水とか量を増やすと重くなりそうなものも、向こうで自由に飲めるから良いよね。

 何ならシャワーだってできるぞ、シャワーは外ではやるなと、父さんに言われてるからやらないけどね。


「んじゃ、いってくるぞ。ソニア、アリーチェ」

「いってきます。母さん、アリーチェ」

「ええ、気をつけてね。エドワード、ルカ」

「……しゃい、……にぃ……とぅ」


 ちゃんと名前を読んでいってらっしゃいをする。

 誰も言葉にはしなかったけど、自然とみんなのルールみたいになっている。

 よしやるぞーという気分になるから不思議だ。 


 今日のアリーチェはもう殆ど眠ってるな、でも頑張って言おうとしてるところが愛らしい。

 ほぼ無意識で、僕の方を先に読んじゃってるから、ちょっと父さんが眉をひそめた。

 やっぱり、自分を先に言って欲しいみたいだ。本当、親バカなんだから。


 まだ誰もいない開拓地へ、到着して、開拓手伝い兼魔法の練習のためのボーンを二体創り出す。


 最近はボーン二体を意識もせず、自然に使えるようになってきて、あまり魔法の練習にならないから数を出したいんだけど、それも父さんに止められた。

 

 流石に目立ち過ぎだからやめろということで、アリーチェの魔力ビー玉見たく、鍬に魔力を通して耕す力アップできないかと模索中だ。


 少しは成功してるんだけど、魔力ビー玉と違ってものすごく通りが悪い。


 アリアちゃんからもらった木剣を父さんが素振りしてた時、「これなら俺でも剣に魔力を通せる」と言っていたので、やはり素材によって魔力の通りが違うのだろう。


 なんといえば良いのかな? 魔力の道は迷路で、通りづらさはホースに泥が詰まっているのに、吹いてる感じ? まあ、なんとなくだけどそんなもの。 


 それでも、頑張って通せば地面に突き刺したときの、深さが全然違う。

 一箇所掘り起こすのに数十回が数回になった。

 ただ、結構集中するから少し疲れちゃう。あと、ボーンの方の鍬には通せなかった。

 出来ないことはないと思うんだけどな、修行不足だな、うん。


 それと、そろそろ魔力操作による人の動きもマスターした気がするから、今度はゴーレム型とか創ってみようかな? あの国民的RPGのゴーレムみたいなのが良いかな?


 形を創るだけならブロック積み上げるだけで、できるけど、ドットとは違いデカく厚くなると、関節とかの可動部がどうして良いのかわからないなぁ。


 そんな取り留めのないことを考えながら、作業していると、いつものメンバーが、開拓地へ現れる。


 レナエルパパことロシェさんが率いる、いつもの開拓メンバー。

 えーと、そうだ。農作業時代の僕の世話をしてくれたヨルタンさん率いる、いつもの魔力草の農作業メンバー。


 これで全員が揃ったので、いつものようなお仕事が始まる。

 って、あれ?なにか違和感があるな。


 そんな事を考えていると、父さんとヨナタンさんが話を始めた。


「おう、ヨナタン。昨日言ってた通り半分は、農地の奴らと入れ替えだな」

「エドさん、坊もおはよう。昨日も言ったが、収穫日はまだだが、ここもまだ不安定でもう収穫しないといけないやつもあるからな。この際、向こうの奴らにも、収穫のタイミングを勉強させようと思ってな」

「おはよう、ヨナタンさん。そうなんだね」


 多分、父さんにってよりも、僕に説明してくれたんだな。


「ルカ! お前には負けねーからな!」


 ヨナタンさんと軽く話をしていたら、どこかの子供が話しかけてきた。って僕も子供だけどね。


 はじめましてと挨拶しようとしたけれど、前にレナエルちゃんと遊んだ時、村の人と会ったら「はじめましてと挨拶してはだめよ」と言われた。

 何故かと聞いたら「狭い村だもの、向こうは知ってるかもしれないでしょ」と言うことだった。


 僕はなるほどと思った。僕は、あんまり人を覚えるの得意じゃないみたいだから、実はすれ違って挨拶してたりするのかもしれないからね。


だから無難に「うん、わかったよ。おはよう」とだけ返しておいた。


「おお、アダンか。ここに入れるようになったのはすごいが、無理はするなよ?」

「わかってるよ! 魔力草は魔力を吸収するから、慣れてないと自分の魔力も吸収されて、疲れやすいんだろ!」

「お、ちゃんと勉強してるな。偉いじゃねーか」


 なるほど、アダンくんって言うんだ。聞き覚えは……ないから、多分はじめましてかな?


「子供はお前だけか。ヨナタンの言うことをよく聞いて、一人で行動するんじゃねーぞ? 間違っても森には近づくなよ?」

「ちぇっ、言われなくてもわかってるよ」


 アダンくんを中心に、父さんがリーダーとして注意事項を農作業メンバーに伝えていた。


 しばらくそれを見ていたけれど、ふと、気がついた。


 ああ、なんだそうか。

 さっき、違和感を感じたのは、

 いつものメンバーがいつものメンバーじゃなかっただけか。


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