物体

バブみ道日丿宮組

お題:ねじれた場所 制限時間:15分


物体

「あの人なにしてるんだろう?」

「穴に挟まってるんじゃないの」

 冷静に幼馴染は答える。そこには奇怪なオブジェクトがあり、その穴に一人の女性がすっぽりとはさまってた。

「挟まってるっていっても穴ねじれてるよね? 身体がそのねじれに対応できないような気がするけれど」

「綺麗にハマってるとかじゃない? 押し込まれて伸びるみたいな?」

 両手をびろーんと伸ばす。

「そんな餅みたいな人間がいると思う?」

 真似してびろーんと伸ばす

「いないだろうね。柔らかい人でも背骨をぐにゃりとデキる人は見たことないね。むしろ気持ちが悪い」

「じゃぁあれは気持ちが悪いに属するの?」

 うーんと唸り。

「そうかもしれないね。ねじれた場所にねじれた人間が、これはまさしく気持ちが悪い」

「でも、なんらかの事故でああなったのかもしれないよ」

「スマホいじってるし、そんなことはないんじゃない?」

 ねじれた場所に挟まってる女性と思われる物体は、何も起きてないかのようにスマホをいじり続けてる。

「あんな状況になってもスマホをいじるなんてかなりの依存症だよね」

 幼馴染である相方を見つつぴこぴことスマホをいじる。

「スマホ依存症な人が挟まる穴とか?」

「そんなクリティカルな穴があったら、世界中で人間を捕まえることができるね。まぁ何に使うかはわからないけど」

 うんうんと頷く幼馴染。

「ちょっとSNSにあげてみようか。何か答えがあるのかもしれない」

「もしかしたらバズるかもしれないね。へんな状況だし」

「でも、周りの人は気にしてないんだよね」

 オブジェクトの周辺には待ち合わせにしてる人や、通勤途中の人がいる。誰しも女性を気にしてる様子はない。まるで視界に入ってないようだ。

「見てみて、写真に写らないんんだけど」

「ほんとだ。だから、みんなには見えてないんだ」

 じゃぁ私たちはなんで見えるのだろうかとお互いの顔を一度見つめ、再度オブジェクトを見直すとそこには奇怪なオブジェクトではなく、デザイン性にこだわったなにかの銅像が建ってた。

「なんだろ? 集団幻覚?」

「集団っていっても僕たちだけだけどね」

 まぁ気にしててもしかたないか。デートしよ、デートと幼馴染は相方の手を掴みその場を後にした。

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物体 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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