SAN値絵画

バブみ道日丿宮組

お題:愛と欲望の絵画 制限時間:15分


SAN値絵画

「随分と暗い絵だね? いつもはもっとライトな色使いをしてるのに……なにかあった?」

「人は歪んでる作品を見るのが好きだからね。たまにこういった闇の世界を作り出すのもいいんじゃないかって思ってね」

「この怪物はいったい何なの? 見たことないデザインだけど、ひょっとしてオリジナル?」

「違うよ。これは他の宇宙にいる邪神の姿だよ。彼らがこの世界で君臨した姿。おぞましく、美しく、儚さを持つ神」

「なるほどなぁ。神様かぁ。会ったことも見たこともないけれど、こんな姿をしてるんだね!」

「これはあくまでもデータに残ってる邪神であって、本当の姿じゃない。これはいわば、愛と欲望にまみれた作品ともいえる」

「その愛と欲望ってのはあなたのもの?」

「そうだね。こうであればいいのにという想いが詰まってる。とはいっても、邪神だから目を合わせてはいけないし、遭遇してもいけないんだ」

「どうして?」

「SAN値が下がるからね」

「なにそれ?」

「恐怖をパラメータ化した値のことをいうんだ」

「それは具体的に変化するとどうなるの?」

「一般的には狂気に飲まれるだとか、正気を失うとかそういった自体に陥るんだ」

「じゃぁこの絵画は見てはいけない作品ってこと?」

「あくまでも想像の中での姿だから、そんなことはないよ。書いてる僕のどこかに異常が見えるかい?」

「普通。いつもみるあなたの姿があるわ。冴えない、小さい、マスコット」

「僕の評価を聞かされるのはあまり好きじゃないね。小さいのは遺伝だし、これから成長するかもしれない。君みたいな胸みたいにね」

「ちゃんと栄養とらないと駄目だよ? なんにしてもどうして邪神を書こうって思ったの?」

「なんとなくだね。表彰されてばっかのデザインなんて面白くないしね」

「これはこれで入賞しそうではあるかな」

「また君は適当なことをいって」

「芸術はわからないもの。それがなんであるかはわかるけれど、何が凄いのかまでは想像がつかないよ。未だにあなたの絵画が売れてる理由がわからない」

「僕としても売れてる理由はわからないよ。自分の好きなものを描いて、世の中に発表してたら、いつの間にかそうなってたんだ」

「ふーん、そうなの」

「そうなんだ」

「これもうすぐ終わる?」

「そうだね。あとちょっとってところかな」

「じゃぁ適当に待ってるね」

「わかったよ」

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SAN値絵画 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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