第85話

あ雰囲気が変わった。

元のユートに戻ったのだ。


「ねえユート。」

「なんだよマリアンヌ、戦争はまだ終わっていないぞ。」

「なら私たちは敵なの?」

「まあ、そうだな。この戦争は不毛の土地、かつての世界樹の荒らした土地を開拓した奴らの独立戦争という意味で奇襲を仕掛けた。」

「そっか。全軍引け!私たちは戦争には敗北している!再度勧告する!全軍直ちに引け!我々は敗北しているこれ以上の戦闘は無意味!撤退せよ!」


マリアンヌは今ここにいる部隊の将として兵をまとめ上げた。


「世界樹教の愚民どもに次ぐ!第三勢力は既に世界樹をこの世から消している。それを持って我らの勝利とはせぬ!信ずることは出来ぬと申するのならばこの第三勢力、世界樹の破壊した土地で生きる者たちを打倒せよ!私の故郷を倒せるものならばな!」

「なるほどな。」

「今度は私たちから奇襲をかけるかもしれないから気を付けてね。」


マリアンヌは戦場のヘイトを全てこちらに向けやがった。


「全く、酷いことするな。自分の故郷が潰されるかもしれないってのによ。」

「いいえ潰されることは無いモノ。だってユートが死ぬ未来が私には見えていない。ユートだってそうでしょう。」

「あれ?お前の職業って占星術師だっけ?」

「違うわよ。私の職業は勇者。勇ましきモノ、正確には違うわね。どこかの誰かさんに告白するタイミングを逃した弱虫ってところかしら。」


私はそのままユートの身体を抱き寄せた。

適性の儀から今に至るまでの長い年月はユートの身体をゴツゴツとした筋肉の成長を感じさせて安心して身を任せられる。


「おいおい、なんだよ。」


髪の毛を触れば昔とほとんど変わっていない。

女の子みたいに柔らかいのに何にも手入れしていない土埃の付いた髪の毛。

でもそれを支える肌はとても強く厚くなっていることがうかがえた。


「おーいそろそろ話してくれ、んぐ!」


私の気持ちなんて一切気づいてくれない彼に対して私ができることはこうして行動で表すことぐらいだった。

言葉にすると恥ずかしくて声が出ないのに身体では表現できるのは可笑しいのかな?

そっと唇を話すと私は今まで生きた人生で最大にして最高の勇気を振り絞って声を出して言葉を発した。


「私はユート、あなたのことが結婚してほしいくらいに大好きです。」


自分だけを見て欲しいけれどもそんなことどうでもよくなるくらいにユートを見つめているだけで好きになる。

私はユートからどんな答えを聞けるのかは分からなかった。

でも、次に発せられる言葉を聞くのも勇気の一つだと思う。


今まで道端にあった石ころに告白されたから断るかもしれない。


でも少しでもいいからユートの中に私が居てくれたら私は満足してしまうのかもしれない。


そんな恋で終わったら私の情熱はニセモノになってしまうと思う。


だから私は何度でも挑戦するんだろう。


自分の恋心を確かめるために。

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