急章
第81話
「俺も又聞きだけどトレーナー系の職種は未来をかなりの的中率で予想できるらしいな。」
世界樹は思い出していた。
自分のことを焼き払ったことなど些細なこと。
真に警戒すべきは栄養を一切己の力に還元できないようにしたこのボディビルドトレーナー、コイツからはそいつに似た脅威が感じられる。
「「「オマエ、オマエ、ニンゲン、ニンゲン、ダカラ、ダカラ、ヒトジチ、ヒトジチ、ユウコウ、ユウコウ。」」」
世界樹は寄生している人間たちに自ら刃を突き立たせた。
「自分の力が使えないから他人の力をそのまま操っているのがバレバレなのにいまさら人質か?」
「「「オマエ、オマエ、ヒトジチ、ヒトジチ、カンケイ、カンケイ、ナイ、ナイ?」」」
「何言ってるんだ?人質ってのは未来でお前の下について俺と人質の両方が助かる可能性があって初めて成立する取引だぞ。それに既にお前の盾になる奴らも居ないしな。」
「「「エ?」」」
どんどん寄生していったツルが枯れていく。
「あららら、もう抗体が生成され始めたみたいだな。」
スライムトレーナーとして行ったのは抗体の生成。
世界樹の根から数百のパターンの薬物が生成可能であること調べたのち栄養吸収が光合成以外での吸収が不可能になっていたことを村長が実験していた。
そして細胞レベルまで小さくしたスライムを体内に摂取させることで薬物耐性を一時的につけさせることに成功した。
あくまで一時的なもので体内にある白血球などの自己防衛反応で消滅する。
世界樹は受け入れさせることで可能にした寄生だがスライムは完全に異物として扱うことで抵抗力をフル回転させる。
「かつてボディビルドトレーナーは己の適性職と相反する行為をしたせいで死んだそうだ。だから俺はスライム、細胞を育てるモノとして相反することなくお前を倒す方法を考えていたんだよ。」
鍛え成長させることが適性職であるトレーナー系の職種はそれに反する成長を止めたりする行為が侵してはならない行為なのだ。
全ての適性職に不可侵領域は存在する。
例えば勇者。
自分が蛮勇以外の勇気を振るえる思い人への場面に出くわした場合決して逃げることができなくなる。
この世界で不可侵領域を知っている人物は極小数、彼らは適性職の赴くままに生きることが至高だと信じて疑わないからだ。
だが認識の齟齬はどこかしらに存在する。
世界の知の隙をつけばいい。
そのために数千通りの試行錯誤をして行っていったのだ。
全ては己の平和のために。
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