第76話
「へえ、嘘が付けないんだ。」
「はい、ここでは一切の虚ろが禁じられた空間です。ここで嘘は言えません。」
「ふーんじゃあ、俺の肉体は既に20代のモノと同じものだ。」
ビキビキと肉体が変化を起こしていった。
「え?」
「だってさっき言ったじゃん。ここは虚ろ禁じられた空間って。嘘は言えないなら嘘が真実になればいいんでしょう。試しに他の嘘を自分の思い通りにならないつもりで答えようとしたらできなかったけど俺が思い通りになるって思ったら真実になった。」
「しかし、このようなことは…………。」
精霊教の教えでは精霊界は真実のみを映し見聞きできる場所と教わっていた。
目の前のこの少年は明らかなる嘘を真実に変換したとでも言いたいのか一気に成長をした。
「ねえねえきみきみ!」
窓の外から声がした。
「ねえ神父様、これが精霊?」
「は、ははあ精霊様!」
神父様は恭しく頭を下げた。
目の前に居る子どものような存在が精霊なのだろうか?
俺にはどうにもあの幼馴染のような存在に見えている。
「まあまあ、そんなに畏まらなくてもいいよ。でさ、きみはさっき嘘なのかな?でも違うね。忘れてる?そんな感じかな?すごいね精霊界のルールを分かっちゃうなんて。」
「せ、精霊様。彼はこの世界のルールが解っているというのはどういう意味なのでしょうか?」
「えっとね。おじいちゃんにもわかりやすくするとね、世界樹、彼もこの子のようにルールを知った、うーんちょっと違うかなそもそもルールを知らないから滅茶苦茶にして使ってる。」
俺がやったのは思い込みだ。
いくら脳が覚えているとはいえそれが現実だという証明は誰にもできない。
実は虚かもしれないし虚が実かもしれない。
その心の隙間をうまく活用してみただけなのだ。
「うーん世界樹って俺より子どもなの?」
「面白い表現だね。まあそれに近いけどちょっと違うかな漂流者っていうのが君たちの居る世界の言葉じゃあってるよ。」
「漂流者ですか?」
「うんそうだよおじいちゃん。あの子はね。君たちの居る世界やこの世界に全く関係ない世界から来たの。そうだね渡り鳥みたいに食べたものの種を運んで行って芽吹かせたものだね。人間も船で他国に種を持ってたりするでしょう。そんなかんじ。」
世界樹は何者かがこの世界に持ってきたモノというニュアンスで話していく精霊。
「ふーん。」
「でもそういった外来種や私たち精霊以外でこの世界のことを掌握したのは初めてだよ。」
「理想は時に実を生み存在は時に虚を生む。っていうのを旅のゲイジュツカって人に聞いたよ。」
「面白い言葉を話す人だね。まあでもきみは世界樹が自分の害を成すものだってわかってるね。だから今回は私たち直々に勇者と魔王を呼んだんだけど。君は予想外だったよ。」
精霊は花畑をくるりと指をさし花を回せると
「だって君魔王や勇者より強いんだもん。」
いたずらっこっぽく彼女は言った。
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