第74話

「あなたの職業は勇者です。」


教会に来て神父様は適性の儀を取り行ってくれた。

私の職業は勇者という職業らしい。

でも勇者ってなんだろう?


「ねえ、神父様!ゆうしゃってなあに?」


「うんミス〇〇、私も存じ上げませんが勇ましい者というそうです。勇気を出せる者ということでしょう。」


「大きいモンスターをやっつけるハンターみたいな勇気を出せる人ってこと?」


「そうですね。ミス〇〇、あなたがそう思うのならそうなのでしょう。しかし勇気とは何も大きな存在に挑むことだけではありません。今日来た皆様もお聞きください。」


神父様はゆっくり諭すように話を始めた。

後ろにいる子どもたちや親たちも黙って聞いている。


「勇気とは嫌いな食べ物を食べることも勇気、苦手なことに挑戦することなのですよ。いいえ少し違いましたね。現状を変えようとすること。それが勇気というモノだと私は思います。ここにきた親御様方には心当たりのある方も多いでしょう。この村は恋愛結婚が大多数ですからね。」


「神父様そんな恥ずかしいこと子どもたちの目の前で言わんでくだせえーよ。もう帰ったら質問攻めに合いますわ。」


誰かの父親が前に出て神父の話を止めさせた。

皆に注目されて顔を赤くしているが皆よくやったと褒めていた。

神父様はその光景を眺めながら謝罪を入れた。


「それはそれは失礼しました。ですが今意見してくれたこともまた勇気なのですよ。ほらあのまま続けていたら私が村の噂を全部話してしまうかも知れない。それをやめさせようと一人意見を言ってくれた。これもまた勇気でございます。」


「勇気っていっぱいあるんだ。」


「そうですよミス〇〇。貴方も勇気を出したいと思う時が沢山出てくるでしょう。その時に勇気を出せる人物に貴方はもっとも適性があると思いますよ。」


「うーんわかんない!」


なんせ今まで勇気を出したことなんてなかった。

現状を変えようなんて思うことは皆無に等しかった。

だから私は言葉の意味がうまく理解できなかった。


でも神父様はにっこりと笑っていた。


「いつも彼と仲良くなりたいからいろんな遊びに誘っているではありませんか。」


「(カーッ!)」


「「「(ニヤニヤ)」」」


親たちは思わず顔をニヤニヤさせている。

子どもたちも釣られてニヤニヤする。


暴露された本人は顔を赤くして何も言えなかった。

好意を抱かれていると認識している彼は案外大人なのか澄ました顔をして待っているだけだ。


「ね、ねえなんか言ってよ!」


澄ました顔をしているモノだから耐えるに耐えきれなくなり話しかける。


「zzz…」


「ね、寝るな!!」


「おはよう神父様。俺の番?」


「ええそうですよ。」


神父と少年は小さくウインクをしあった。

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