第64話

「き、貴様は何者だ!そして、どちらの味方だ!」


正気に戻った兵士たちは突然の乱入者に対して困惑の声をあげる。


「どちらの味方でも無いさ。俺は俺の味方だ!」


第三勢力としての参戦。

たかが一人に何ができると判断したとき。


兵士としての人生が終わりを告げる。


誰一人として一瞬してしまう数の油断。


英雄譚より描かれる数々の英雄の死亡例。


奇しくも兵士たちはその英雄譚を知っていた。


スライムの暗殺譚とも呼ばれるその歴戦の英雄を殺せしモンスターに後遺症を残し蹂躙されていった。


「っつ!馬鹿者どもが!」


「貴様ら世界樹教の敵を前に油断するなど大義を忘れたか愚か者ども!」


各軍の将軍たちに激励をされ直ちに正気を取り戻し、敵と言う認識のもとスライムに攻撃を仕掛けんとする兵士たち。


だがここで両軍の全ての戦意を喪失させる一手をユートは差した。


「なあ、お前ら、この根っこを知ってるか?」


「あ、あれは!」


「世界樹教のエルフのこの反応…………まさか!?」


世界樹の根。


かつて世界を滅ぼそうとした外来種にして勇者と魔王の力の源。


「外来種ってのは農家にとっても悩みもんでね。駆除するのに苦労したさ。」


「貴様!神聖なる世界樹を害虫扱いするなんぞ万死に値する!」


「即刻それを燃やすんだ!そうすれば戦争は終わる!」


各々が各々の主張を通そうと躍起になり武力を行使するかに思えた。


「こいつを根に生えるとどうかなるかじっくり見ときな。」


根をほんの一ミリつけただけ。


戦場の焼け野原だった場所が瞬く間に緑の大地に変わり巨木がそびえたった。


「おお神よ!」


「こ、これで世界は終わりだ…………。」


世界樹教の軍は世界樹を前にして恐れおののき、それに対抗していた王国軍は膝をつき始めた。


「なあ、とある地域に生息する木についての話をしようか。」


彼らに一瞥もくれずに語りだしていくユート。


「その木からは油も取れるし成長も早く石鹸の材料に適していることから植林が盛んに行われたそうだ。もちろん生えていなかった地域でも行われた。そこから数年たった時その住民は間違いに気が付いた。俺はその間違いの証明をするためにこの世界樹を壊すのさ。」


「信徒たちよ!あいつを止めろ!」


「な、まさか、あの少年のやりたかったこととは?」


世界樹の生み出した緑に潜んでいたスライムたちが一斉に飛び出し発火しだした。


「燃やせ、偽りの繁栄を。」


「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」「「「Sura!!」」」


「馬鹿だよな。俺らが苦労したことを再度行ってるんだから。」


世界樹が作り出した緑は瞬く間に燃え上がっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る