第20話

光るところに足を運ぶと景色が切り替わった。

辺り一面が昼のように明るかった。


「あれここどこ?」


周りを見れば村長も居ない。


「これ光る石?」


天井が強い光源体なのか真昼のように明るい。

そしてあるものが生えていた。


「これなんだろう?芋じゃないよね。」


ユートは知らなかったがこれは不毛の土地以外ならどこにでも生えているただの雑草だった。

そうどこにでも生えている雑草。


この不毛の土地では決して育たない植物だった。


「うーん美味しいのかな?」


そう思って一つ葉を千切り咀嚼してみる。


ペッ


「苦ッ!」


とりあえず苦いということはわかった。

苦いものには気をつけた方がいいので食べないことにする。


「スラ坊食べる?」


スラ坊ならもしやと思い食べさせてみるとゆっくりと消化し始めた。

デスカンクのときのように嫌そうな顔をしなかったのでスラ坊の味覚では美味しいらしい。


「赤スラ坊やメタルスラ坊は?」


食べないの?と聞いてみるとメタルスラ坊は食べるが赤スラ坊は食べなかった。


「赤スラ坊は食べないんだ。」


赤スラ坊に草を向けて近づけてみたりもするが一切反応は無かった。


「ん?メタルスラ坊がシマシマメタルスラ坊になった!」


メタルスラ坊に黄緑色の無数の線が身体に巡っていた。


「かっけえ!」


1人叫びまくっていると何かが近寄る音が聞こえた。


「あ!スライムだ!!」


スラ坊と同じノーマルなスライムがこちらにやってきた。


「すげえいっぱいいる。」


その数は数千に上るだろうかその全てが一斉にユート目掛けて走り出している。


「あわわわわ!」


スライムたちはユートを飲み込んでいく。


そこでユートの意識は途絶えた。


「………………ートやユートや………」

「んう?」

「ユートや大丈夫かのう?」

「村長?」

「お主やスラ坊たちが突然眠りだすものだから急いで洞窟の外へ連れ出したんじゃぞ。」


どうやら自分は眠っていたらしい。

スラ坊たちも目を覚ましたようでユートに擦り寄っていた。


「何か鉱毒にでもやられたやもしれんから急いで村に戻るぞい!」


そう言って村長はユートとスラ坊たちを脇に抱えて杖も背負い全力疾走で走り出した。


「村長、杖なくても歩けたんだ。」

「当たり前じゃ。杖はあくまで護身用じゃよ。」


村長はいつも緊急時は頼もしかった。

自分の身体はなんともないが今はこの村長に運ばれるときの揺れが好ましかった。


「村長、夢見たんだ。」

「なんじゃ?」

「見たこともない苦い植物とスライムがたくさんいる夢。」

「それは良い夢じゃったな!」


村長は笑いながら村に急いだ。

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