第2話 ※注意、作中のはベノムであってポイズンではない
彼女が旅立つ日、俺はずっと開拓をしていた。
「おいユート、お前今日幼馴染のマリアンヌちゃんが王都に旅立つ日だろうに何で畑なんて耕している?」
親父が俺に話しかけてきた。
そういえば今日が勇者の幼馴染が旅立つ日だったと忘れていた。
「え?それがどうかしたの?」
しかし俺に殆ど関係のない話のためひたすら畑を耕すことに専念していた。
「お前なアこんな村でも一緒に過ごした幼馴染だぞ別れに未練なんて無いのか?」
「別れの挨拶をする暇があったら開拓をしていた方が良いんじゃないの?」
「開拓ってお前……まあ、良いか。」
ひたすらに鍬を振り下ろし硬い土と向き合う。
ボキッ
「あ、鍬の柄が折れた。」
「ならもうやめとけよ。」
「でもまだまだ今日のノルマがあるし、それに戻っていたらお昼にここに来ちゃうから。手で掘るよ。」
「ユート、今俺の耳がおかしくなったのかな?今お前が素手で掘るって聞こえた気がしたんだが?」
なんとも失礼なきちんと手で掘ると言ったというのに。
道具が無ければ手を使うのは当たり前じゃないか。
「ちゃんと言ったよ手で掘るって。」
「もしかして今まで鍬が壊れた時って素手でやっていたのか?」
「そうだよ。」
ふい親父が俺の手を掴んできた。
「お前この手は……」
ユートの父はこの手が適性の儀を受けたばかりの6歳児がして良い手では無いことに気が付いた。
「土を耕しているときに虫か何かに触ったことはあるか?」
「あるけどそれがなに?」
「その虫は足がいっぱいある奴だったか?」
「そうだけど?」
「馬鹿野郎!それは殺人ムカデだぞ!!本来であればお前は3日3晩で寝込んでいるかもしれないんだぞ!!!」
親父に殴られそうになったのでひょいと避けた。
「でもなんともないよ?」
「そんな筈はねえお前の母ちゃんがお前を生んでから嚙まれちまって3日3晩寝込んで死んじまったんだぞ。」
「ほっほっほ、大丈夫じゃよ。」
突然横から声が聴こえた。
「村長……それはどういうことですか?」
「簡単な話じゃよ。おぬしの妻は毒に侵されなおユート君に栄養を与え続けたから毒に対して耐性ができているのじゃよ。」
「そんなことが本当に起こりえるのですか?」
「もちろんそれだけではないがのう。まあ時期にわかることじゃ。一先ずはわが村から勇者が現れたからその見送りにユート君が居ないのがマリアンヌちゃんには不満だったらしくってのう。言伝を預かっておる。」
村長は心して聞いておけよとでも言うような形で真剣な眼でユートを見据えた。
「わたしはおうとででっかいオヤシキをたててあんたをみくだしてやるんだから!」
なんとも老人が茶目っ気を加えて幼子の声真似をするとはどういった拷問なのだろうか?
「まあ、なんだユート君は今まで通り開拓をしていれば大丈夫じゃよ。」
流石に自分でやっても寒いと思ったのかそそくさに去って行った。
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