さよならと和歌
旬なトマト
第1話
『パチッ』いつもなら重りがのったように重いはずの目蓋が勢いよく開いた。グーっとお腹が声をあげないことからも、もう彼女と会えなくなってしまったことの実感がわいてくる。
実感がわいてくると共に、寂しさと愛おしさの涙が蛇口から吹き出す水のように目からこぼれ落ちる。
今年の春から僕は、大学生になる。入学先は某有名私立大学の文学部だ。
僕がその大学に入学しようと思った訳はたった一つ。
その大学が「人はどんな文芸作品に感動するのか」という研究の最先端の大学だったからだ。
昔から国語の、特に和歌が好きだった僕は、ずっとこの大学に入ろうと決めていた。
それから1か月程経って、僕は大学に入学した。入学してしばらくたつと、同じ学部の優斗、遥太の二人の男友達とつるむようになった。
授業もいつも3人で後ろの方の席で受けるように。サークルも同じサークルに入って、まだ活動はしてないけど仲良く過ごしていた。
そんな一見してなに不自由無さそうな僕だけど、少し残念なことがあった。入学が決まってすぐ、2年生から海外に短期留学することになった。大学に入学して最初の実力テストで、文系科目で高得点をとってしまったからだ。
僕は今、大学から二駅の街にあるアパートの一部屋に、親から仕送りを受けながら暮らしている。
アメリカに行くとしばらくこの国に戻ってこれなくなるから、それまでの間だけだけど。
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