たたらま町

桐崎 春太郎

episode1 たたらま駅

 柔らかい黄色い光が眩しくてゆっくり目を開く。眩しい光は体を優しく照らす。目の前は青い柔らかいカバーの長椅子。横に並んだ丈夫なガラス窓。低い天井にぶら下がる吊り革。体がグラグラ揺れてガタンゴトンと音がする。

 ここは電車の中。

 なぜ?なぜ俺は電車の中にいる。俺はどこかへ向かって電車に乗って眠ってしまった?わからない。俺は思い出せなかった。

 

 俺の背後の窓から看板が見えた。


『たたらま駅』


 たたらま駅の看板が立っている背景には沢山のポスターが貼ってあった。○○不明。○方○○。そのポスターには何か人の絵と字が書いてあった。しかし汚れのせいでよく見えない。


 しかし俺には見えなかった。スマホを開いた。スマホは使える。そう安堵しながらスマホをいじった。そして適当に都市伝説収集アプリを開いた。俺は友人の勧めによって都市伝説などが好きになった。オカルトは好きだった。だから、こうして都市伝説収集アプリを見る。

 いつになったらつくだろうか。ついたら警察に場所を教えてもらおう。

『次はーたたらま駅ー、たたらま駅ー。』

 そう放送がなった。


 たたらま駅………。


 聞き覚えがある。

 俺はゆっくり目を閉じた。そして思い出そうとした。嫌な予感がする。しかし電車は止まらずたたらま駅に真っ直ぐ向かっていた。

 俺はメール帳を開いた。そして友人カイトの連絡帳から電話画面を開いた。そして電話開始ボタンを押した。

 コール音が響く。電車の中で電話をするのは駄目なことだったが周りには人がいなかった。


 プルルル プルルル プルガタン


『もしもし、どうした?』

 その声は、機械だったが間違えなくカイトの声だった。俺は電話越しに行った。

「調べてほしいんだけど。」

『は?急だな。』

『何を調べるんだ?』

 カイトはそう言った。温かい光は眩しいくらい俺を照らす。電車の揺れを体で感じながら電話を耳に当てていた。

「たたらま駅について…。」

『たたらま駅?』

 俺の後ろの窓にまた看板が映る。たたらま駅。カンカンカンカンと踏切の音が聞こえだした。

『あー…たたらま駅じゃなくてたたらま町だったら知ってるよ。』

「教えて。」

『いいけど何でいきなり?』

 電話越しでカイトは笑った。しかし俺は特に笑えなかった。

「今俺はたたらま駅にいるから。」

『は?何それ。』

 キキィィィーーと金切り音が響いた。そしてシューンと空気が抜けた音がした。それと同時に電車が止まった。

 その後扉が開いた。

「ついた。」

『やばくね?』

 電話越しにカイトが焦っていた。

「元に戻るの手伝って。」

 シク

『おう。』

 シクシク

『それよりさ、さっきから変な声がする。』

「え?」

 俺はカイトの発言に驚いた。そして体が震えるのを感じた。嫌な予感がする。

 そして耳を立てた。


 シク、シクシク。


 声が高く少女の泣き声のようだった。俺は目を見開いた。


 シク、シクシクシクシク、 ウッウッ… シクシク オカアサン ウッウゥ… ドコ…?


 本当に声がする。

『少女の声?』

 その声は、電話越しのカイトにも聞こえていたようだ。俺は立ち上がって歩いた。

「探してみる。」

『やめとけよ…。』

 俺は扉を開けて声の方に進んだ。

「ここらへんからする気がする。」

 足元を見ると花弁が散った潰れた花が落ちていた。そしてすぐ目の前には金髪のツインテールのピンクの服を着た黒目の少女、いや幼女がいた。少女は泣きながら俺を見た。

「え……だぁれ?」

 俺は電話でカイトに伝えながら少女の頭を撫でた。

「少女がいた。」

『マジか。』

『連れてくの?』

「そりゃそうだろ。」

 しゃがんでるのをやめて立って扉を見た。

「とりあえず電車から出る。」

 俺は少女を見た。

「一緒に出よ。」

 少女は俺の差し出した手に小さな手を乗せて頷いた。

「う…うん。」

 俺はそのまま電車を降りた。

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